同じ大阪市内にあるジュンク堂書店難波店は、2014年12月と15年5月に反ヘイト本のコーナーを設けたとき、「韓国や中国の肩を持つのか」といった抗議の電話がかかってきたが、一件一件丁寧に説明し、コーナーは常設にした。福嶋聡店長は言う。

「苦情は『見てくれている』ということだし、反対の意見を聞ける貴重な機会。書店は意見の交戦の場であって、あらゆる意見を排除しないという民主主義を体現している場所です」

 東京・神保町にある農文協・農業書センターは、農業書の専門店でありながら、平和や沖縄の基地問題、民主主義をテーマにした書籍を多く扱う。ネットでは批判的な書き込みもあるが来店や電話での抗議は今のところない。書店員の谷藤律子さんは言う。

「最近は何も起きないうちから自主規制するケースが多い。私が闘っているのは『自粛ムード』だなと思います」

AERA  2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋