しかし、10月28日には、「レバダ・センター」がプーチン氏の10月の支持率を発表、こちらは88%だった。政府系、独立系双方の調査が、9割近い支持率で一致する結果となった。

 一方、ロシア経済に目を転じれば、ウクライナ危機後に欧米が科した経済制裁と、ロシアの主力輸出商品である原油の価格低迷の影響で疲弊している。今年1~8月の国内総生産(GDP)は前年同期比で約4%下落。通貨ルーブルは対米ドルで、この1年間にほぼ半額まで暴落。インフレも激しい。

 だが、プーチン氏の支持率は昨年3月にウクライナのクリミア半島を一方的に併合して以来、どの調査でも80%を超えたまま。今回のシリア空爆でさらに上昇傾向を見せている。

 なぜだろうか。

 シリアでロシア軍が展開している軍事作戦の成功ばかりを伝える、テレビ報道の影響も大きいだろう。ウクライナ危機以降、欧米からの制裁と批判にさらされている今のロシアにはある種、戦時中にも似た社会心理が広がっているようにも思える。「大統領を支持するか」という質問が「ロシアを愛しているか」という質問とほぼ同一視され、「ニェット(ノー)」とは答えにくい状況が生まれているという指摘もある。

 確実に言えるのは、プーチン大統領が今や、内政、外交共にフリーハンドに近い絶対的な権力を手中に収めているということだ。支持率に一喜一憂している世の多くの指導者から見れば、うらやましい限りだろう。

AERA 2015年11月9日号より抜粋