夫が家計を制しているつもりでも、妻はこっそりコツコツとためて、離婚に備えているというケースも。愛がさめると女は怖い?(撮影/写真部・植田真紗美)
夫が家計を制しているつもりでも、妻はこっそりコツコツとためて、離婚に備えているというケースも。愛がさめると女は怖い?(撮影/写真部・植田真紗美)

夫婦のどちらが家計の“制空権”を握るか。ときに派手な“空中戦”に発展しがちな問題だが、将来の不安に備えるにも、双方の歩み寄りが大切だ。緊張緩和には意外なツールが役立つようで――。(ライター・三宮千賀子)

 タイトルは「特別会計」。スマートフォンの画面には、下着代、塾の模試代などの項目と金額が並ぶ。合計5万円ほどの追加の振り込みを依頼する、妻からの催促メールの文面だ。

 東京に単身赴任中のメーカー勤務の男性(46)は「分かりました」とだけ返信した。もう3年ほど夫婦のコミュニケーションはメール中心。しかも必要最低限の文字数で“お金”の話だ。

 男性の年収は1300万円。大阪市内の高級住宅街で習い事に明け暮れる専業主婦の妻には、毎月、一般家庭より多めに生活費を渡しているはずだ。

「お互い息子とはLINEも使っていますが、夫婦間はメールで十分。正直、妻とは話したくもないので、言われたままにお金は振り込んでいます」

 高校3年生の息子がいつか独立したら「生活に苦労しない程度のお金」を渡して離婚するつもりだという。妻の同意は得られていないが、リタイア後は別のパートナーとカフェを経営するのもいいと思っている。相手の当てがあるわけではないが、そのために「妻に持っていかれない隠し財産もためている」と、この男性は明かす。

 財布を制する者、夫婦を制す──。やはり世間の夫婦関係は、お金のパワーに大きく左右されるのだろうか?

●ETC前急停車のワケ

 共働きで財布は別、生活費は夫がやや多く負担していたという不動産会社で働く女性(48)は、2年経った今でも、夫に対する怒りを抑えられない。きっかけは、夫が深夜にタクシーで帰宅して、酔ってぶちまけた財布の中身。中からバーや高級バッグのレシートを見つけた。

「3度目の浮気疑惑。いつも子どもには『うちはお金がないから高校は公立だ』って言っているのに、と頭にきて。それで私が彼の収入も管理することにしたんですが……」

 さらなる事態に愕然とした。取り上げた夫の口座は、なんとマイナス100万円。借金をして、女性に使い込んでいたのだ。「今は浮気可能なお金は渡していません。信頼も愛情もゼロですね」(不動産会社の女性)

 できれば、そんな最悪の状態になる前に手を打ちたい。

 どうやら最初から妻が家計を管理することは、夫の浮気の防止には効果的なようだ。逆の立場から、こんな事例も聞いた。

「奥さんは出産準備で里帰り中。海の近くの話題の店に行こうって言うので、ご飯ぐらいならと思ったのですが……」

 そう話すのは、アパレル関連で派遣として働く独身女性(31)。前の職場で出会った40代の既婚男性に「有休を取るから」とドライブに誘われ、応じた。

 高級車で都内から神奈川に向かうため、高速道路に乗ろうとしたときだった。突然、男性はゲートの直前で車を停止した。

「彼は『そうだ、ETCカードを抜き取らないと』って大慌て。聞けば、そのまま通過すると高速道路の入り口と出口の場所が記録され、クレジットカードの明細に出てくるからって」

 男性の妻は毎月、数字が合っているか、不正な引き落としがないか明細を確認しているという。不正ではないが、平日の湘南ドライブは“不自然”だ。

●夫の年収を知らぬ主婦

 彼は思惑どおり、カードを抜き取り高速代を現金で支払ったものの、女性は男性に幻滅した。

「お金目当てじゃありません。確かに女友達の中には、既婚男性に家賃だけ払ってもらってる子もいます。既婚のサラリーマン相手に10万円ぐらいのお小遣いをもらっているいわゆる“プチ愛人”な子も。そうなりたいわけじゃないけど、妻に気兼ねして、自由にお金を使えない男性に興味はないです」

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