結婚の枠にとらわれずに恋愛関係を広げる【非独占婚】を貫いているが、配偶者以外と関係をもつことは、民法上の「不貞行為」に該当する。それでも、婚姻を届け出た理由の一つは、親を安心させるためだったという。

「結婚しないことによる社会的な不利益が多すぎる。足元がおぼつかなければ、主義も生活もままならないというのが本音です」

 50歳時点で一度も結婚していない人の割合を示す「生涯未婚率」は10年、男性20.1%、女性10.6%といずれも過去最高。1980年は男性2.6%、女性4.4%だった。結婚するのが当然だった30年前と、結婚が人生の選択肢の一つにすぎなくなった今とでは、結婚する動機や目的が大きく変化していてもおかしくない。

 アエラは「結婚は愛かコスパか(http://news.yahoo.co.jp/feature/22)」という連載を9月上旬からYahoo!ニュース上で公開している。「あなたの人生に結婚は必要?不要」という意識調査には約25万票が集まり、必要派が3分の2になった。

 ただ、その理由を詳しく見ると……

「愛する人と過ごしたい」
「子どもを産み育てたい」
「老後に孤独を味わいたくない」
「誰かのために生きたい」
「責任を持つことで成長したい」

 人それぞれのそんな事情を、一定の枠に収めるのは難しい。いくら「結婚は必要」と考えている人でも、自分が望むスタイルと、従来の結婚の枠組みとが合わなければ、慎重にならざるを得ないだろう。

●夫だって「雇えばいい」

 本県で畜産業を営む知里口香穂里さん(38)は大学院修了後、就職先が見つからず、家業を手伝い始めた。飼育している黒毛和牛100頭を24時間体制で世話し、家業を発展させて次世代につなぐことが、人生の目標になった。

 周りで常識のように言われる「嫁に入る」のが前提の結婚には、意味が見いだせなかった。独身を貫こうと決めていたが、香穂里さんにとって必要な結婚の形が一つだけ見つかった。【雇用婚】だ。

 飼料となる牧草の刈り取りに人手が必要な夏場の繁忙期に、信頼できるスタッフを期間雇用するのは難しい。結婚すれば、必要なときに人手が得られるし、長期的に仕事を覚えてもらうこともできる。34歳のときにインターネットの婚活サイトに登録して「婿活」をし、今の夫(40)と知り合った。

 自営業の夫は冬場が繁忙期。お互いに「需要と供給」がマッチした。香穂里さんが夫の経済面を保証する「雇用」に似た形で結婚生活が始まり、2人の子どもにも恵まれた。

 結婚を「永久就職」と呼んだ時代もあるとはいえ、雇用と結婚ではやはり相手に求める条件が違うように思える。パートナーとして譲れない点はなかったのか。

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