すっきりしたシルエットで軽い着心地の三陽商会「100年コート」。着るほどに味が出る。ポケットの内側は暖かい起毛素材を使用(撮影/岡田晃奈)
すっきりしたシルエットで軽い着心地の三陽商会「100年コート」。着るほどに味が出る。ポケットの内側は暖かい起毛素材を使用(撮影/岡田晃奈)

 日本で作られた洋服の「良さ」をどう伝えるか。生き残りをかけて、ある認証制度がスタートした。

「100年コート」と呼ばれるトレンチコートがある。

 販売するのは三陽商会。糸を染め、生地を織り、撥水加工を施して最後は青森県にある工場で熟練の職人が縫い上げる。染め、織り、縫製などすべての工程が日本で行われ、ボタン付けやアイロン掛けにも機械は使わない。出来上がるまでに6カ月以上を要する。

 長めにとられた袖丈は、年月を経て袖口が擦り切れた時に修理をしてもバランスがとれるように、という配慮から。撥水加工は、ドライクリーニング10回程度まではその効果が保てるという。

 価格は税抜きで7万~9万円台と決して安くはないが、しっかりした縫製で長年着られることを思えば納得できる。同社の梅本祐助さん(35)はこう話す。

「30年後に織りや縫製の工員が何人残っているか、技術を引き継いでくれる人がどれだけいるか、危機感を抱いています」

 今年3月、このコートが「J∞クオリティー」認証を取得した。取得の条件は、原料の生産以外のすべての工程を国内で行う純日本製であること。「縫製だけを日本で、その他の工程は海外で」というケースでも名乗ることのできる「メイド・イン・ジャパン」との差別化のために、日本ファッション産業協議会が始めた新しい商品認証制度だ。

 中国やアジア諸国で洋服が安く作られるようになり、国内の工場は次々に閉鎖された。アパレルメーカーも不振が続く。一方で、海外ブランドからは日本の織りや編み、染め、縫製などの細やかな技術が評価されている。それを追い風にして立ち上がった制度だという。

 取得には、織りや編みの工場、縫製工場、企画や販売をするメーカーなど、各工程を担う企業単位で認証が必要だ。9月初旬の時点で、292社が認証を受けている。

 それら企業で作られた最終的な「J∞クオリティー」商品は、現在135品目。メンズでは五大陸(オンワード樫山)やダーバン(レナウン)のスーツ、レディースではイネド(フランドル)のダッフルコートやリフレクト(ワールド)のジャケットなどが認証を取得している。

AERA  2015年10月12日号より抜粋