佐藤亮子さんの長女が小6のときの夏休みのスケジュール表。分刻みで勉強の予定が組み込まれている。亮子さんはこの表の作成に3日かけた(撮影/写真部・岸本絢)
佐藤亮子さんの長女が小6のときの夏休みのスケジュール表。分刻みで勉強の予定が組み込まれている。亮子さんはこの表の作成に3日かけた(撮影/写真部・岸本絢)
「灘→東大理III」3兄弟の母佐藤亮子さん奈良県在住。主婦。津田塾大卒業。3男1女の母で、3兄弟が全員、灘中・高等学校を経て東京大学理科III類に合格。『受験は母親が9割』(朝日新聞出版)を7月21日に発売予定(撮影/編集部・石田かおる)
「灘→東大理III」3兄弟の母
佐藤亮子
さん
奈良県在住。主婦。津田塾大卒業。3男1女の母で、3兄弟が全員、灘中・高等学校を経て東京大学理科III類に合格。『受験は母親が9割』(朝日新聞出版)を7月21日に発売予定(撮影/編集部・石田かおる)

 子どもを難関大学に合格させるために、親はどんなサポートをすればいいのか。

 勉強部屋はつくらずリビングに4人分の勉強机を並べて、3人の息子を灘中・高等学校から東京大学医学部(理科Ⅲ類)に合格させた母がいる。奈良県に住む佐藤亮子さん。高2の長女(17)も現在、東大理Ⅲを目指して勉強中だ。

 子どもたちは決してガリ勉タイプではない。中学、高校では部活動も楽しんだ。だがその裏で亮子さんが物事に優先順位をつけ、とことん面倒を見た。家の手伝いも学校の準備も、一切させなかった。

「家事の習得はいつでもできますが、勉強は頭の柔らかいうちのほうがより多く吸収できます。だから勉強する時間のほうを優先させてきました」

 テレビは見せず、3歳までに1万冊の絵本を読み聞かせ、1万曲の歌を歌って聞かせた。言語能力は思考力に直結するからだ。加えて亮子さんは、「小学校6年までの勉強が人生の根幹をなす」として、1歳から公文式教室に通わせて「国語と算数」を先取りし、4年生から「理科、社会」を補強するために受験塾の浜学園に通わせた。

 初めから中学受験を目指していたわけではない。

「灘中がどこにあるのかも知りませんでした。小学5年の子が夜10時に塾から帰宅するなんて遅すぎると思い、受験用の算数の講座はやめたらどうかと長男に言ったほどです。ところが息子は『やめたくない。楽しいんだ!』と興奮気味に言い、そこからわが家の本格的な中学受験が始まりました」

 個性の異なる4人の子どもたち一人ひとりの模試や宿題に目を通し、弱点を見つけ“具体的な解決法”を編み出したのも亮子さん。三男が灘中の算数の過去問で伸び悩んだとき、たどり着いたのは「筆圧」だった。

「灘中の算数はスピードが要求されます。三男は筆圧が強く、書くスピードが遅かった。消しゴムで消した文字跡がケアレスミスを誘発してもいた。筆圧を矯正して、成績を上げました」

 子どもたちの毎日のスケジュール表も、大学入試まで亮子さんが作った。時間感覚を養い管理能力を育むため、家の時計は一つを除きすべて20分早めてある。これで遅刻もしない。一人ひとりにタイマーを与え、休憩時間も分単位で管理させた。

 東大入試の日は、宿泊した東京のホテルから大学の門まで息子たちに付き添った。「18歳の子に、親がそこまでするのか」という批判にはこう反論する。

子育ても仕事と一緒で、結果が大事。中途半端な感情をはさんではダメなんです。私の使命は、無事に試験会場に送り届けること。安倍総理のSPと一緒です。総理の車が自宅前に到着したあと、SPは玄関までの数メートルをひとりで歩かせますか? そこで事故にあったら? それと同じです」

 目的意識を持って徹底する。その先に、3人の息子の東大理Ⅲ合格があった。

AERA 2015年7月27日号より抜粋