「課長はいてもらわないと困る」

 社員1万人を超える大企業で、部長ともなると「別世界」の住人。簡単には話しかけにくく、気軽に相談できる課長は「兄や姉のような存在」だ。

 都内の高級ホテルで広報を務める女性(35)は、「役職よりもやりがい優先」が持論。課長という言葉の響きにもときめかない。そもそもホテル広報の仕事は「自分で考えて決断」の連続で、いまの職場に広報課長というポジションはない。自身が仕事をするうえで「課長がいたら」と思う場面もなかった。

 しかし最近、「人を育て、ノウハウを継承させたい」願望がふつふつと湧いてきた。課長は、培ったものを後輩に譲り渡すためのポジションとして、存在意義があるのではないか。

 肩書で仕事をする時代は終わったのかもしれない。しかし、肩書が、よりやりがいある仕事への挑戦を促すのも事実。課長は、多くの人にとって部長より現実的な目標になり得るがゆえに、「働く人のやる気のもと」にもなっている。

AERA  2015年7月13日号より抜粋