東京三田倶楽部帝国ホテル本館にある慶應OBの社交場。歴史は40年位上で、入会には慶應大卒であるほか、正会員2人の推薦と審査、会費が必要(撮影/今村拓馬)
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東京三田倶楽部
帝国ホテル本館にある慶應OBの社交場。歴史は40年位上で、入会には慶應大卒であるほか、正会員2人の推薦と審査、会費が必要(撮影/今村拓馬)

 学生時代に培った「人脈」は、社会に出てからも役立つことがある。長い歴史と強い結束をもつ大学になると、それは大きな支えにもなる。

 日本はもとより、北米、欧州、中近東やアフリカまで世界中に800以上。網の目のように地球を覆う同窓会なんて、他にあるだろうか。

 ご承知のように「三田会」は、慶應義塾大学のOB・OG組織だ。三田会の包括組織「慶應連合三田会」のホームページには、「慶應に入学して良かったと思うのは大学を卒業してからかもしれません」とある。

 この言葉を実感を持って受け止めるのは、現在メーカーで働く30代後半の女性だ。慶應在学中にフランスに留学。もともと研究者の道に進もうと考えていたが、同級生が就職活動をするのを見て、自分も社会に出てみたいと考えるようになった。だが、それまで全く就職を意識していなかったうえ、自分は海外。何をすれば…と途方に暮れているとき、力を貸してくれたのが「フランス三田会」で出会った先輩たちだったという。
 
 20代から60 代まで、約50人が参加していたパーティーで、商社や金融機関に勤務しフランス駐在中の先輩たちは、口々に教えてくれた。

「女性はうちの会社の総合職として入社できないことはないけど、結局は活躍できないよ」
「就活のときはいろいろ考えるけど、結局はどこに入社しても自分次第。気楽にやったら」

 こうした言葉に背中を押されて、海外からの就活に成功。志望企業に入社できた。現在はアジアに赴任中の彼女は言う。

「海外でも三田会に行けば同窓の先輩たちが助けてくれるし、境遇の似た人が多いからすぐ友達ができる。今度は自分が、不安な気持ちで留学や赴任してくる後輩の力になりたい」

AERA 2015年6月1日号より抜粋