三越伊勢丹「紳士靴は人生の相棒」紳士・スポーツ統括部 紳士靴バイヤー 中村良枝(43)撮影/写真部・東川哲也
三越伊勢丹
「紳士靴は人生の相棒」

紳士・スポーツ統括部 紳士靴
バイヤー 中村良枝(43)
撮影/写真部・東川哲也

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

【ニッポンの課長フォトギャラリーはこちら】

 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回は三越伊勢丹の「ニッポンの課長」を紹介する。

*  *  *

■三越伊勢丹 紳士・スポーツ統括部 紳士靴 バイヤー 中村良枝(43)

 東京・新宿に、「世界屈指」の紳士靴売り場がある。服飾好きなら知らぬ者はいないだろう。伊勢丹新宿店メンズ館の地下1階には、国内外の180ブランドから約2千足が並ぶ。これだけそろうショップは、本場の英国にさえ存在しない。そんな売り場のバイヤーを務めるのが、中村良枝だ。

 靴の買いつけに奔走するかたわら、売り場づくりの全権を担い、職場に一体感をつくりあげる。紳士靴売り場のスタッフは、総勢約100人。そのうち2割は三越伊勢丹の社員だが、ほかは取引先からのパートナースタッフだ。自社製品に関する知識は、販売における強みになる。もっとも、彼らが売るのは自社製品だけではない。

「みんな同じ売り場に立つのですから、ほかのブランドの商品も売ってもらいます。求められるのは売り場としてのチームプレー。横断的な知識をつけるため、頻繁に勉強会も開きます。靴の製法やブランドの歴史、靴の細部に込められた意味……。知らなきゃ売れませんから」

 かくしてできあがるのが、1人あたり年間売り上げが、トップでは数千万円というプロ集団だ。

 短大を卒業して1992年、伊勢丹に入社した。この間、ほとんどを紳士靴の担当できた。シューフィッターの資格をとり、何万という足を見るうちに、測らなくてもサイズがわかるようになった。そんな中村の見立てを希望する紳士は少なくない。「中村待ち」ができるほどだ。

 景気が厳しいときでも、消費税率が上がっても、10万円前後の高級靴が売れる。なぜなのか。

「本物志向。歴史の風雨に耐えて生き残ってきた名品は売れるんです」

 いい靴は、手入れをすれば10年、あるいはそれ以上、人生の相棒であり続ける。中村が売るのは、そういうものなのだ。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・岡本俊浩)

AERA 2015年2月9日号