悪用や事故は数多く発生している。昨夏にはサッカーのフランスチームの練習風景の盗撮が報じられた。英ヒースロー空港近くでは無人機が旅客機とニアミス。今年1月には、米政府の男性職員が遊びで飛ばした小型無人機が、ホワイトハウス敷地内に墜落。メキシコでは合成麻薬を積んだドローンが墜落しているのが見つかった。

 国内でも昨年、湘南国際マラソンの会場に落下する事故が起きた。野波教授はこう予想する。

「新しい技術が生まれると必ず悪用はある。高層マンションでカーテンが開いている窓からの盗撮や、空からのストーカー犯罪も増えるだろう」

 今後、ルール作りが急ピッチで進むと見られるが、参考になりそうなのはカナダの例だ。国土が広いカナダでは、早くから発電所や送電線などの監視にドローンを利用し、世界に先駆けて運用ルールの整備を進めてきた。カナダ運輸省のホームページには、90メートルを超える高さや、高速道路、イベント会場など人が集まる場所での飛行禁止といった原則の他、飛行目的や機体の重量別に、従うべきルールが明確に示されている。

AERA  2015年5月4日―11日合併号より抜粋