タワーレコード「生配信という一期一会」タワーレコード 広告宣伝メディア本部 宣伝マーケティング部チーフ 山田尚宏(39)撮影/写真部・東川哲也
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タワーレコード
「生配信という一期一会」

タワーレコード 広告宣伝メディア本部 宣伝マーケティング部
チーフ 山田尚宏(39)
撮影/写真部・東川哲也

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はタワーレコードの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■タワーレコード 広告宣伝メディア本部 宣伝マーケティング部 チーフ 山田尚宏(39)

 タワーレコードは一昨年、NTTドコモの子会社になった。山田尚宏はその年の査定面談で、上司に質問した。「デジタル化のいま、会社はどう対応するんですか」。すると、こう切り返された。「君にピッタリの仕事がある」。かくして、インターネットでの番組配信事業「TOWER REVOLVE PROJECT(タワレボ)」が立ち上がり、山田はその担当課長を任されたのだった。

 高校在学中の1993年、東京・新宿の店舗でバイトを始めた。あの頃の西新宿は、アナログレコード店が群雄割拠。パンクキッズだった山田は、その“熱”にひかれた。明治学院大学を卒業後もバイトを続け、27歳で正社員に。30歳で旗艦店の渋谷店に異動すると、洋楽ポップ/ロックフロアのチーフになった。

 そんな販売現場を最もよく知る男が今、月に約20本ものネット番組に現場監督として携わる。番組の企画を立て、出演交渉をし、売り場担当から情報を吸い上げる。

 渋谷店内の特設スタジオに、山田の姿があった。生放送中の番組「タワレコ渋谷洋楽第二企画室」を見守っている。

「このバンドが好きなら、これも楽しめるはず。なぜなら……」と、案内役の音楽ジャーナリスト、高橋芳朗らが軽妙なトークで曲を薦め、洋楽を掘り下げていく。ネットで探し、クリック一つで欲しいものが自宅に届く時代だが、

「レコード店や音楽の専門家の持つ『お薦め力』は、生きた情報です。生配信という一期一会で、リアルの店舗の魅力を再認識してもらいたい」

 ラッパーのライブを生配信することもあれば、タワレコ社長とアイドルグループのトーク番組を放送することも。累計の視聴者数が1万人に上る人気番組もある。盤を売る仕事ではなくなったが、寂しくはない。

「音楽への熱、愛を伝えることに変わりはないのだから」(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・岡本俊浩)

AERA 2014年8月18日号