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「私を殴る勇気ある?」香港のマリー・アントワネット

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AERA#中国
10代、20代の若者が幾晩も夜通しで民主化を求めた (c)朝日新聞社 

10代、20代の若者が幾晩も夜通しで民主化を求めた (c)朝日新聞社 

中国を変えることは難しいと分かっていても、立ち上がったエネルギーの熱量は大きかった (c)朝日新聞社 

中国を変えることは難しいと分かっていても、立ち上がったエネルギーの熱量は大きかった (c)朝日新聞社 

「政治的不感症」の香港人たちが、街頭に飛び出した。デモの背景にあるものとは。

 香港の人々が中国にノーを突きつけた直接の原因は、3年後に行われる香港トップの行政長官選挙を、現行の間接選挙から直接選挙に切り替える制度改革に対して、中国が下した無情な決定がきっかけだった。

 1人1票の投票権は認めても、候補者は、親中派で固められた指名委員会で2~3人に絞られ、事実上、中国政府の好ましい人しか立候補できない。約束の「普通選挙」は形骸化され、香港の人々は「偽普選」だと怒り、「真普選」を求めて、仕事や授業を放り出して街頭に飛び出したのである。

 それにしても、お金儲け優先、現実的でクール、「政治的不感症」とも揶揄されてきた香港の人々が、なぜこれほど熱くなったのか。選挙方法に問題はあるが、北京の傀儡(かいらい)である「親中派」の行政長官が香港を治めるスタイルがやむを得ない現実という暗黙の了解があったはずだ。

 香港政治に詳しい立教大学の倉田徹・准教授は「香港の中国化という現象への危機感」の影響を指摘する。

「香港の主体性を取り戻したい。価値観の違う人々が香港を変えようとしている。そんな鬱積した感覚が広がっていたことが、爆発的な運動を引き起こした。北京に一泡吹かせようという意識が共有されたのでしょう」

 今回のデモには中国が介入を恐れる欧米の関心も高く、中国にとっては、返還後の香港で最悪の事態だった。中国からすれば、香港の繁栄と安定を支えているのは自分たちだという自負がある。なおさら、香港人の反中化は我慢がならない。中国のネット上では香港批判がいまや日本批判よりも活発に展開され、香港人は欧米の犬を意味する「港狗」と呼ばれている。今後も中国と香港との溝は一層深まるだろう。

 それにしても北京の誤算は、現在の行政長官である梁振英氏のあまりの不人気ぶりだろう。支持率は2割台と過去最低。何を言っても市民を怒らせる舌禍体質。香港エリートのなかで時々見かける典型的な嫌みなタイプの人間のようだ。

 加えて23歳の次女がネットで言いたい放題にデモを批判し、火に油を注ぐ。「デモに参加しているのは失業者ばかり」「私のネックレスはあなたたちの税金で買ったのよ」「これからセントラルに行くわ。私を殴る勇気あるの?」などと挑発し、香港のマリー・アントワネットという悪名を頂戴した。

 こうした梁氏の「更迭」説は、民衆をなだめる懐柔策として、現実味を帯びてくることは十分にあり得る。一方、選挙方法について、10日から本格的に始まった香港政府と学生・市民との対話でも譲歩を得ることは難しい。せいぜい、17年の普通選挙は中国の案通りとして、さらに5年後の選挙について「より民主的な方向へ対話を重ねていく」といった言質を取ることが精いっぱいかもしれない。

AERA 2014年10月20日号より抜粋


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