アップルウォッチには、本体枠がステンレスの通常モデルと、アルミニウムで軽量のスポーツモデル、18金のエディションモデルがあり、アメリカでの価格は349ドルから。発売は2015年とされている(日本は未定) (写真:gettyimages)
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アップルウォッチには、本体枠がステンレスの通常モデルと、アルミニウムで軽量のスポーツモデル、18金のエディションモデルがあり、アメリカでの価格は349ドルから。発売は2015年とされている(日本は未定) (写真:gettyimages)

 スマートフォン市場を作ったアップルが次を狙っている。株価を下げるほど「想定内」だったアップルウオッチだが、狙いは別にあった。

 9月9日(日本時間10日)、「Apple Watch(アップルウォッチ)」は発表された。確かにIT系のガジェットとしては洒脱であり、上質な印象を受けた。デザインやバンドのバリエーションを含めれば34モデルもあり、従来のスマホとも、他社のスマートウオッチとも展開が異なる。

 だが、用途の提案という意味で、新奇性は薄かった。メールやSNSの通知表示にフィットネス、といった使い方は他社も志向しているところだし、単独では利用できない「iPhoneの周辺機器」というところも同じだ。宝飾品も含めた「すべての時計を過去に追いやるような存在」でもなく、そこに落胆した人々も多かったようだ。

 実際、9日の米市場でアップルの株価は、アップルウオッチ発表後に急落。しかし、「肝」は別のところにある。

「マックもiPodもiPhoneも、アップルの製品は、ユーザーインターフェースの革新とともにあった。iPhoneの操作を小さく模しても、時計には有効ではない」

 アップルのティム・クックCEOは、発表会でこう説明した。

 アップルウオッチには、竜頭(側面のつまみ)を回して画面を上下に動かしたり拡大したりする「マジッククラウン」という操作方法が採用された。スマホのようにタッチで操作するには小さすぎるからだ。音と振動でコミュニケーションする機能もある。心拍センサーで取得した自分の脈動を再現して画面上で確認したり、脈動をメッセージとして他人に伝えたりもできる。

 タッチパネルを指でトンと叩く「タップ」や指を滑らせる「スワイプ」、タップと同時に指をずらす「フリック」など、iPhoneで採用された操作性はハードやソフトの開発者を刺激し、その可能性を広げた。アップルウオッチの米国での発売は来年初め。「マジッククラウン」でもこれを再現できるだろうか。

AERA  2014年9月22日号より抜粋