夫婦共働きが増えたとはいえ、家計の管理は妻の担当というのが多数派のよう。夫には思うところもあるようだが、一方で居心地の良さもあるようだ。

 所要時間はのべ40分。家族4人分の皿洗い1回につき、1ポイントが付与される。3ポイント貯まると、弁当を作ってもらえる権利をゲット。IT企業に勤める男性(49)が妻との間で定めるルールだ。

 男性の毎月の小遣いは2万5千円。この中で、ランチ、飲み会、ガソリン、晩酌のビールまでをやりくりする。ビールを発泡酒にすることだけは何としても避けたい。だからランチは一日300円台にまで切り詰める。それが手作り弁当なら0円になるというミラクル。皿洗い労働は文字通り、「小遣い稼ぎ」なのだ。

 クロス・マーケティングの調査によると「妻が管理」は全体の4割を占める多数派。その夫たちの暮らしぶりはおおむねシビアである。新生銀行が実施しているサラリーマンのお小遣い調査では、2014年の平均額は3万9572円。ランチ代は541円となっている。

 前出の男性は1989年に大手IT企業に入社し、30代で年収は1千万円を超えた。当時は深夜も持ち帰り残業に追われ、ガチャガチャ音を立てて皿を洗う妻のいら立ちに向き合うこともなかった。

 しかし10年ほど前から不況のあおりで年収は減り続け、関連企業に転籍となったいまの年収はピーク時の7割。ちょうど子どもの進学や住宅ローン返済と時期が重なったため、妻がパートに出ることになった。

 家事も育児も家計管理もすべて任せてきた妻に、収入面でも頼ることになり、以前よりもいっそう頭が上がらない。今では新聞を読むのも妻が優先で、男性が出勤する時に持って出るのは前日の新聞。帰宅後も、男性が時間差で食事をする家族4人の皿を延々と洗い続ける傍らで、妻は趣味のパッチワークを優雅に楽しんでいる。

「私には家計の監査権限すら与えられず、『内部留保金』がいくらかも、妻がどれだけへそくりをしているかも不明です。でも家事の負担が減ると妻の機嫌はよくなるし、皿洗いのポイントでゲットした愛妻弁当を会議室で食べながら昨日の新聞を読むのも悪くない。家庭は、年収が多かったころより円満になりました」

 一見、古いタイプの家計管理方法だが、根強く支持されている背景には、夫婦に波風を立てない「無難さ」や、慣れ親しんだ居心地のよさがあるのだろうか。

AERA 2014年7月28日号より抜粋