5カ国19チームから集まったメンバーでW杯ブラジル大会に臨むザックジャパン。ザッケローニ監督が今、チームづくりのために注力していることとは。

 21 日に始まった日本代表の国内最終合宿。公開された15分間の練習でザッケローニ監督は、選手をポジションごとに配置し、ボールを奪うために相手を囲い込む守備戦術などを繰り返し確認した。自らは2年ぶりに選出した大久保嘉人の傍らに立ち、位置取りや味方との距離感などについて指示。代表が積み重ねてきた動きへの理解を求めた。

 日本代表は全23人中、12人が欧州組。初出場の1998年フランス大会代表に海外クラブ所属選手はゼロで、徐々に増えたとはいえ、前回南アフリカ大会でも4人だったのだから、「過半数」は隔世の感がある。国内組もJリーグの8チームから選出されており、23選手の所属チームは実に19にも上る。代表の強化責任者で、日本サッカー協会の原博実・技術委員長は言う。

「コンディションの違いをならし、チームとして一つの状態にもっていくことが直前合宿の鍵。複雑なパズルを解くのにも似た、大変難しい仕事です」

 シーズンを終えて欧州から合流する選手とJリーグが開幕したばかりの国内の選手では、体やメンタルの状態が全く違う。

 加えて、国内組には昨季からの好調を維持する大久保がいる一方で、波に乗り切れない柿谷曜一朗がいる。岡崎慎司、川島永嗣は欧州で充実したシーズンを過ごしたが、キャプテンの長谷部誠はけがに苦しみ、エース格の本田圭佑、香川真司は十分な出場機会を得られなかった。

 コンディション、試合感覚、疲労度──。パフォーマンスに直結するベースの部分でも大きなバラつきが生じているのだ。

 だからザッケローニ監督は、「すり合わせ」に何より心を砕いていると前出の原さんは言う。「所属チームにおける役割と戦術理解を『代表仕様』に戻すのがすり合わせ。いろいろな監督がいますが、ザッケローニ監督は4年間を通じて、この作業を特に丁寧に行ってきました」

 冒頭の代表合宿で行われていたのは、まさに「すり合わせ」。4年間、レギュラークラスを固定してきたのも、「すり合わせ」を重んじるからこそだ。「ザックジャパンの武器」とも言える、小気味よいパス交換から3人目、4人目の選手が絡む躍動的な攻撃も、「すり合わせ」を経ることで可能になる。

AERA 2014年6月2日号より抜粋