「鬼ごっこ」のようにゲーム感覚で走る東京レディース・ハッシュ・ハウス・ハリエッツクラブはボランティアで運営され、参加費は1回1000円+飲み代。野山では、チョークの代わりに「ハッシュ」と呼ばれる小麦粉などで目印を描いたのがネーミングの由来とか(撮影/高井正彦)
「鬼ごっこ」のようにゲーム感覚で走る
東京レディース・ハッシュ・ハウス・ハリエッツ
クラブはボランティアで運営され、参加費は1回1000円+飲み代。野山では、チョークの代わりに「ハッシュ」と呼ばれる小麦粉などで目印を描いたのがネーミングの由来とか(撮影/高井正彦)
矢印のほか「道を渡れ」の記号や、女性限定の記号なども(撮影/高井正彦)
矢印のほか「道を渡れ」の記号や、女性限定の記号なども(撮影/高井正彦)
「ON-ON」は終了後のパーティーの意味(撮影/高井正彦)
「ON-ON」は終了後のパーティーの意味(撮影/高井正彦)
終わると「初参加の人、はい飲んで」「誕生日の人、はい飲んで」……。ビールが次々に胃袋へと消える(撮影/高井正彦)
終わると「初参加の人、はい飲んで」「誕生日の人、はい飲んで」……。ビールが次々に胃袋へと消える(撮影/高井正彦)

 ランニングブームが起こって久しいが、最近では一風変わったものも登場している。

 家の前の路地に、チョークでナゾの矢印が描かれていることに気づいたのは、数年前のこと。ある夜、その矢印の方向に、ランニングの一団が駆け抜けていくのを目撃した。調べてみると、どうやら彼らは「ハッシュ・ハウス・ハリアーズ」(通称ハッシュ)というランニングゲームを楽しむクラブの人たち。

 ハッシュは1938年、マレーシアに駐在するイギリス人たちが、運動不足解消とビールをおいしく飲むことを目的に立ち上げた歴史あるランニングクラブだ。現在は世界150カ国以上に約10万人のメンバーがいるらしい。

 驚くことにハッシュは、日本にも十数のクラブがある。その一つ「東京レディース・ハッシュ・ハウス・ハリエッツ」のランニングゲームに1月下旬、参加させてもらうことにした。活動は毎週水曜日の夜。誰でも参加でき、申し込みは不要。インターネットのサイトで発表される場所に、走る用意をして行けばいい。

 この日の集合場所はJR巣鴨駅。「道に描かれた矢印をたどってスタート地点まで来るように」との指示があった。

 やり手の女スパイ気取りで改札を出たのだが、肝心の矢印が見つからない。早くもこの時点で汗だくだ。駅前をウロウロと歩き回り、ようやく道の端にチョークで描かれた矢印を発見!

 ハッシュはここからが本番だ。毎回変わる「ヘアー」(野ウサギ)と呼ばれるホストを、「ハリアー」(猟犬)と呼ばれるほかのメンバーが、道の矢印をたどって追う。要はオリエンテーリングの要素がある“走る鬼ごっこ”を想像してほしい。

 時間になるとスタート地点に、続々と参加者が集まってきた。この日の参加者は二十数人。男性の参加者もいて、外国人と日本人の割合は、ざっと半々くらいだ。コースは7~8キロ。競走ではないので、自分のペースで走ればいい。

 とはいえ、道の矢印は狭い路地に入っていったり、神社の階段を上らせたりと、けっこう意地悪だ。迷ったり、歩いたりしながら、約1時間かけて完走した。

 ゴール地点では冷えたビールが待っていた。看板に偽りはなく、そのグビグビのうまいこと。でもハッシュのメーンイベントは、実はここからだ。みんなで居酒屋に移動し、ビールを飲むわ、飲むわ。かと思うと、世界のハッシュクラブで歌い継がれる英語の歌をみんなで歌う。ハイテンションのまま、楽しい夜が更けていった。

AERA 2014年2月24日号より抜粋