10月31日の中間決算の会見で、東京電力の広瀬直己社長は、今年度の黒字化について「非常に厳しい収支になる」と強調した (c)朝日新聞社 @@写禁
10月31日の中間決算の会見で、東京電力の広瀬直己社長は、今年度の黒字化について「非常に厳しい収支になる」と強調した (c)朝日新聞社 @@写禁

 おいおい、ずいぶん儲かってるじゃないか――。だれもが目を疑ったに違いない。東京電力の中間決算が1400億円の黒字に転換。ほかの電力会社の業績も急回復した。原発再稼働がなければ経営が成り立たないなどと言っていたが、これは一体どういうことなのか。

 電力10社の燃料費は、東日本大震災前には約3.8兆円だったが、火力発電の増加で約7兆円に膨らんだ。人件費削減といった自助努力だけでは立ち行かないという。しかし、この論理がいかに都合がいいものかは、数字を見れば一目瞭然である。

 たとえば東電は、人件費を183億円削ったものの、電気料金の値上げで1770億円も収入が増えた。つまり、各社の好決算は昨年9月以降、次々と実施された電気料金の本格改定による値上げのおかげなのだ。

「基本的に、この値上げが燃料費の増加分を穴埋めした形です。本来だったら、東電の経営は原発事故の損害賠償などで大変なことになっているはずですが、こうした費用が決算に響かない制度になっているんだから黒字になって当然」

 と語るのは、立命館大学の大島堅一教授(環境経済学)だ。

「逆に言えば、原発を動かしていなくても黒字になる。電力会社がなぜ再稼働にこだわるのかといえば、簡単な話です。廃炉にすると、(原発の)毎年の減価償却が一括償却になって債務超過に陥る。総括原価方式のもとでは、原発が停止していても、維持費、減価償却費はすべて電気料金に含まれる。つまり、電力会社が破綻しないための費用を国民が払っているのです」

 おかげで当事者の東電は能天気なものだ。社内からはこんな声が聞こえてくる。

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