千葉県出身。来年2月にファーストアルバムをリリース予定。(撮影/山本倫子)
千葉県出身。来年2月にファーストアルバムをリリース予定。(撮影/山本倫子)

 児童虐待をテーマにした新人のデビュー曲が注目を集めている。10月にデビューしたシンガー・ソングライター、文月(ふみつき)メイ(27)のシングル「ママ」(ユニバーサルミュージック)だ。

《ぼくのことが邪魔なの? あのゴミ袋と一緒に捨てるの?》(以下、《 》内は「ママ」から)

 虐待を受け実母に命を奪われた子ども。それでも、唯一無二の母親を空の上から見守り、慕い続ける。切ない心情が、素直な旋律とともに描かれている。

 今この「ママ」が、ネットを中心に波紋を広げている。アップされた動画サイトでの再生回数は125万回を超え、多くの人の心に何かを訴えかけているのだ。しかし、9月から配信予定だった有線放送では、「歌詞の内容が過激すぎる」として、放送を見合わせる事態になる。

《神様が決めたの? ぼくは生きちゃダメって》《ぼくね、天使になったよ いつでもママを見守ってるよ だって弱虫なママは一人じゃ生きられないでしょ》

 選択された言葉そのものは過激ではないが、綴られた内容はショッキングで重い。そこに賛否両論が渦巻いた。

「親の身勝手な言い分。子どもはこんなふうに思っていない」「虐待された子どもに救いがなさすぎる」

 などといった意見がネット上に寄せられている。関東地方に住む20代のある母親も当初、この曲に抵抗感があったという。

「悲しい歌のようなので、聴くことを避けていた。でも、しっかりと歌を聴いてみると素直に心に響いてきました。たまにイラッとして、感情的に怒ることがありました。そういうとき、子どもがびっくりしたような表情をする。それを思い出し、罪悪感と後悔の気持ちになりました。改めて自分の子どもがとても大切な存在で、心からの愛が確認できました」

 実際に虐待経験のある主婦から文月にメッセージが届いた。

「小2の子が2、3歳だったころ、『あなたさえいなければ』と手を上げることもありました。それでも我が子は『ぼくがママを守ってあげるよ』って、トントンして逆に寝かしつけてくれました。文月メイさんの歌を聴き、涙が止まりませんでした。『ママ』がもっともっと世の中に広まって、一人でも多くのかけがえのない小さな命が救われることを、心から願っています」

AERA 2013年11月18日号より抜粋