「NISAに金融機関は社運をかけて取り組んでいる」(証券業関係者) (撮影/写真部・植田真紗美)
「NISAに金融機関は社運をかけて取り組んでいる」(証券業関係者) (撮影/写真部・植田真紗美)

 来年1月から導入される少額投資非課税制度(NISA)。1人最大500万円が非課税になる。聞こえはいいけど、何ができるの? メリットとデメリットを知って使いこなそう。

 NISAの仕組みは多少複雑だが、うまく活用すればメリットのある制度だ。対象者は20歳以上の国内居住者。1年間に100万円までの投資額から生まれた利益が非課税になる。一つの口座で受けられる非課税期間は最長5年間。非課税期間中の売却はいつでも可能。また、使い残した枠があっても翌年に繰り越すことはできない仕組みだ。

 5年間の非課税期間終了後は、100万円までの口座残高を、また別の非課税枠に移して運用を続けることができる。もちろん、非課税枠での運用を続けたくない場合は、売却するか、非課税枠ではない口座に移して運用してもいい。口座を開設できるのは2014年から23年までの10年間。ただし、工夫すれば、最長14年まで非課税期間にできる。

 例えば、14年に開設した非課税口座の残高100万円までを19年に他の非課税枠に移し、23年にまた他の非課税枠に移す。すると27年まで非課税の恩恵を受けられる。

 対象商品は国内外の上場株式、公募株式投資信託、ETF(上場投資信託)、上場REIT(不動産投資信託)。MMF(マネーマネジメントファンド)や公社債、預貯金は対象でない。債券は全て対象外と思うかもしれないが、投信には債券を運用対象にしたものもある。

 NISAを活用した投資の方法は大きく二つ。値下がりリスクが高いが、大幅な値上がりも期待できる「ハイリスク・ハイリターン運用」、または、安定的にコツコツと投資する「安定運用」だ。

 1年100万円の枠内であれば、それを元本に投資して、どれだけ利益が出ても非課税。ハイリスク・ハイリターン運用は「元本が減ってしまう可能性が高くても、大きな利益を追求したい」人に向いている。投資先としては、例えば、新興国に投資する株式や債券のファンド(投信)への投資があげられる。これらは、価格や為替の変動が激しい。

「ハイリスク・ハイリターンの運用は100万円投資して大きな損を被っても生活に困らないような人にしてほしい」(モーニングスター代表の朝倉智也さん)

 ただ、「そんなのは博打みたいで性に合わない」人や、投資をする資産的な余裕はあるが、あまり投資経験がない人は安定運用から始めたほうがいい。投資先の例としては、バランスファンドがある。バランスファンドとは、主に国内外の株式や債券などに分散投資する資産配分になっているファンドのことだ。

「バランスファンドは上下の動きが緩やかです。例えば、日経平均株価が大幅に上昇しても、バランスファンドはそれほど上がらず、動きを見ていても面白くないかもしれません。でも、本当はそれがいいんです。サラリーマン世代にとって、上限100万円は少ない額ではありません。月に1万円ぐらいで投資を、と考えているようだったら安定運用がいい」(朝倉さん)

 積み立てができる金融機関には野村証券、大和証券などがある。なかには、投信の積み立てはできるが、株式の積み立てができない金融機関や、積み立て自体ができない金融機関があるので、選ぶ際には注意して選ぼう。

AERA 2013年10月14日号