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米のシリア攻撃は「どこを狙うか」が難しい?

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 米国が、シリア政府の化学兵器使用を断定し、攻撃準備に入った。確たる証拠も法的根拠もない攻撃は、軍事的にも難点が多い。

 攻撃は東地中海にいる米駆逐艦4隻からの巡航ミサイル「トマホーク」計48発のほか、ステルス爆撃機B2からのGPS誘導爆弾投下も考えられている様子だ。目標は軍事施設に限定し、期間は3日間、とも報じられる。しかし巡航ミサイルや精密誘導爆弾は、何を狙うかが難しい。

(1)化学兵器の貯蔵庫、工場を爆撃すれば猛毒のサリンなどが飛散し、大規模な汚染を起こす
(2)約80基ある短、中距離ミサイルを壊せば、イスラエルは喜ぶとしても、内戦での化学兵器使用の防止には役立たない
(3)軍の司令部や政治中枢を叩いても、要人の所在は不明で排除は困難
(4)米軍などの参戦で最近衰えつつある反政府側が勢いを盛りかえし、現政権が倒れれば、反政府側にいるイスラム過激派が化学兵器を入手する機会となる
(5)完全解決には地上侵攻で全土を占領する以外に手はないが、世論、財務上これも不可能──

 米統合参謀本部議長のデンプシー陸軍大将が慎重論を唱えたのも当然だろう。

 米国はイラク攻撃で大失敗をする以前にも、99年にユーゴスラビアのコソボで「50万人の大虐殺が進行中」との情報に踊らされ、NATO諸国と共に79日間ユーゴ猛爆撃を行った。停戦後コソボに入ったNATO軍は2108体の遺体しか発見できず、前年のユーゴ治安部隊とコソボ解放軍との戦闘の死者が約2千人と言われたのと一致し、大虐殺はデマと分かった。

 米国は15の情報機関を持ち、要員は10万人以上、年間4兆円余の情報予算を費やすが、大統領側近の国家安全保障会議(NSC)の要求に応じて情報を上げる仕組みだから、巨大情報機構も政府首脳部の思い込みを補強するだけの結果になりがちだ。日本としては、シリア攻撃に賛同を求められても、疑問の余地がない証拠が示されるまで静観するのが無難だろう。

AERA 2013年9月9日号


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