(※イメージ)
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 親が学校へ行く子どもにボイスレコーダーを持たせ、いじめなどの証拠を集める―――そうした事例が最近、小学校などでは少なくないようだ。

 しかしいじめや人間関係のトラブルは子どもだけでなく、職場やママ友の間にもある。なかには、ボイスレコーダーが防衛手段ではなく、悪口を広めるための「武器」になっている例もある。

「働くママだけ、私たちに仕事を押しつけて、ずるーい」

 都内に住む30代の会社員女性は、自分が不在だったときのPTA会議の議事録を文字起こししていて、あぜんとした。約2時間の会議は途中からグダグダになり、最後はほとんど、会議に出席していた専業主婦ママによる、欠席していた働く母への悪口大会になっていたのだ。それらは「これ、文字起こしお願いね」と、専業ママからにっこり笑って渡されたレコーダーのなかにしっかり録音されていた。

 私に聞かせたくて、あえて悪口部分をカットせずに渡したのか。でもよく考えたら、自分だって働く母との会話のなかで、「専業ママは世間知らずよね」くらいのことはよく言っている。「仲間」だと思っている働く母のなかにだれか「スパイ」がいて、その様子を録音されていたら……。いつ、だれがボイスレコーダーをバッグに忍ばせているかわからない。疑心暗鬼になり、ママ友との付き合いは、ほとんどなくなったという。

 家庭というインフォーマルな場に、ボイスレコーダーが入り込むケースも。千葉県に住む60代の女性は、同居する実の息子から、「母さんもたいがいにしてくれよな」と言われ、1本のボイスレコーダーを渡された。なかに録音されていたのは、息子の嫁との台所でのやりとりだった。調理用具の使い方などをめぐり、「そういうやり方はしないで」など、ややキツい口調で女性が嫁に言った言葉を嫁が録音し、息子に「証拠」として突きつけたのだ。息子からは「嫁イビリ」だと責められた。

「私もちょっと言い方がキツかったかなと思いましたが、それをわざわざ隠し録りして息子に言いつけますか。以来、お嫁さんとはもちろん、息子との関係もギクシャク。ボイスレコーダーなんてない時代だったら、うまくいっていたのに…」

AERA 2013年8月12-19日号