地元・博多に“凱旋”した指原莉乃(20)は6月13日、HKT48劇場(福岡市)で地元ファンの温かい拍手に迎えられた。

 だがその5日前、選抜総選挙で指原の1位が明らかになった瞬間、つまり2位として大島優子(24)の名前が告げられた時、会場の日産スタジアム(横浜市)には、明らかにしらけたムードが漂った。大島の受賞スピーチが終わるとともに、少なくない数のファンが席を立ったのも、その現れだった。

 5回目を迎えたAKB48の選抜総選挙。指原は2位に1万4千票もの差をつけて、圧勝した。得票数は歴代最高という快挙。それなのに、この温度差──。いったい何が起きているのか。

 まず、指原の15万票の中身を検討してみよう。昨年、指原は約6万7千票を集めて4位。そこから約8万3千票も上積みできた要因は、大きく三つある。

 恋愛スキャンダルでAKBからHKTに“左遷”されたことによって、九州で新たなファン層を開拓したことが一つ。ほかのメンバーのキャラを見極めて、人気を押し上げる「名プロデューサー」ぶりを発揮したことが二つ目。それぞれのメンバーのファンが感謝の意を表し、自分が「推しメン」のために用意していた票の一部を指原に投じたと見られる。

 さらに重要だったのが、「アンチ」の存在。スキャンダルを起こしたのになぜ脱退しないのか。大してかわいくもないのに、なぜチヤホヤされるのか──指原にそんな反感を抱くAKBファンは少なくなかった。批評家の濱野智史氏は言う。

「あっちゃん(前田敦子、21)がそうだったように、アンチとの戦いがファンを燃えさせる。推しメンへのアンチの声が多いほど、負けさせてなるものかとファンは考え、なるべく多くの票を投じようとするのです」

AERA 2013年6月24日号