日本ベアフット・ランニング協会の練習会風景。初心者も参加できる。日程は協会のHPを参照(撮影/写真部・東川哲也)
日本ベアフット・ランニング協会の練習会風景。初心者も参加できる。日程は協会のHPを参照(撮影/写真部・東川哲也)

 ランニングがブームになって久しいが、今、ひとつのランニング法が注目を集めている。ベアフット・ランニングと呼ばれる裸足、もしくは裸足感覚シューズで走るランニングスタイルだ。

 そもそも裸足ランニングは2009年に『BORN TO RUN』という、裸足ランナーのバイブル的著作が出版されてからアメリカで起こったムーブメント。日本では10年5月、日本ベアフット・ランニング協会が立ち上げられた。代表理事の吉野剛さんは、走法につて次のように話す。

「米ハーバード大学の進化人類学のリーバーマン教授の研究では、裸足で走ると、関節にかかる負担が5~7割減少するとしています。『BORN TO RUN』の著者は、手術が必要と言われていたケガに悩まされていましたが、裸足で走るようになったら治ったといいます」

 では、なぜ裸足ランニングが、ケガの減少につながるのか。この走り方の最大の特徴は、前足部(フォアフット)で着地することにある。前足部とは、足の指の付け根から土踏まずまでの部分(土踏まずは含まず)を指す。フォアフット・ランニングの提唱者で運動生理学が専門の福岡大学の田中宏暁教授は「ケガを防ぐためには前足部着地がいい」と推奨する。

「一般的なシューズランナーの多くは、かかとから着地をしていますが、故障の原因の多くは、このかかとに受ける強い衝撃で、ひざやくるぶし、腰を痛めてしまうことにあります。前足部着地をすれば、自然に、かかとの負担が軽減されます」

 前足部着地とは、歩幅を小さくし、足のバネを使ってはじけるように前に進むイメージで走る方法である。

「この着地法は足の構造上、理にかなった動きです。前足部はかかとの2倍の面積があり、さらにアキレス腱、ふくらはぎの筋肉などで衝撃を吸収できるため、力が分散されます。衝撃はかかと着地の3分の1ほどに減り、足裏の感覚も鋭くなるので、障害物も避けやすくなります」

 実際に裸足になって走ると、最初はかかとで着地した時に小石などを踏んで、とても痛い思いをすることがある。ただ、裸足に慣れれば、自然と前足部着地になっていくという。

AERA 2013年5月6日・13日号