シェールガスの産地となっている地域では、企業や労働者が大挙して押し寄せ、「ゴールドラッシュ」のような状況だ。米国は「エネルギー革命」に沸いている (c)朝日新聞社 @@写禁
シェールガスの産地となっている地域では、企業や労働者が大挙して押し寄せ、「ゴールドラッシュ」のような状況だ。米国は「エネルギー革命」に沸いている (c)朝日新聞社 @@写禁

 フラッキングという言葉をご存じだろうか?シェールガスブームに沸く米国で、最近急に耳にするようになった。そのフラッキングをめぐって、米国は二分されている。

 フラッキングは正式には「ハイドローリック・フラクチャリング」、日本語では水圧破砕法と訳す。強力な水圧を人工的に作り出して、地下深くの地層に亀裂を入れ、そこからガスや石油を抽出する手法だ。

 いま米国はエネルギーバブルとも言われる活況に沸いている。恩恵をもたらしたのは、シェール層と呼ばれる割れやすく薄い堆積岩層に存在する天然ガスであるシェールガス。CO2排出量が少なく、従来のエネルギー源に比べて環境にやさしいと喧伝されてきた。

 これまでフラッキングに莫大な開発費用をかけてきたエネルギー業界は、天然ガス価格の低下、多くの雇用の創出など利点を主張しているが、ここにきて、反対運動が盛り上がっている。

 ウエストバージニア、オハイオ、ペンシルベニア、ニューヨークの4州にまたがるマーセラス・シェール層。一大シェールガス生産地だが、特にペンシルベニア周辺で、子どもの喘息や皮膚疾患などの健康被害を訴える住民が出てきて、破砕に起因する水や空気汚染との関係性が指摘されている。

 反対派が問題にしているひとつのポイントは、水圧を作り出すために使われる大量の水の利用と、それに伴う水の汚染だ。環境問題についての著書が多数あるサンドラ・スタイングレーバー氏は、シェールガス開発の危険性を知って以来、反対運動の先頭に立っている。

「ひとつの坑井の破砕に使われる水の量は800万ガロン(1ガロン=3.785リットル)で、半分は地中に閉じ込められ、残りは破砕に必要な化学薬品に汚染された状態で地上に出てくる。ただでさえ危機にある水源を無駄にするだけでなく、飲料水や大気の汚染も深刻な問題です」

AERA 2013年4月1日号