格闘技というと男性競技のイメージが強いが、その道を究めて世界に打って出る女性もいる。

 今年9月に中国・マカオで開かれた第4回世界ジュニア武術(ウーシュウ)選手権大会。高校1年生の山本千尋さん(16)が槍術1位、剣術と長拳(武器を使わない演武)で共に2位という快挙を達成した。

 ブルース・リーやジャッキー・チェンのイメージが強い中国武術だが、日本で親しまれているのは実際に拳を交えるものではなく、太極拳に代表されるような声を出さない演武種目。カンフー映画好きの母親の影響で3歳のころから中国武術をやり、過去4回国際大会に出場している山本さんだが、中学時代にやめかけたこともあるという。

「映画のイメージで『アチャーって言うんやろ』ってバカにされるし、他のスポーツやってる子は進学がどんどん決まるのに自分は進路も決まらないし」

 マイナー武術ゆえ練習場確保もままならない。棒を振り回す練習も近くの河原でせざるを得ず、同級生の目が恥ずかしくて深夜にやったりもした。

 だが、武術の成績を評価してくれた高校に進学し、今はとことん前向きになっている。

「演武にはその人の個性がすべてあらわれる、そこが面白いんです。魅力をもっと伝えていきたい」

AERA 2012年11月26日号