業績悪化で進む電産大手各社の大リストラ。その過程、過酷な退職強要が起きている、と国会で追及された。名指しされた企業の言い分は―――。

 ふだんは弛緩しがちな議場が、静まり返った。

「NECでは1人の労働者に11回も面談し、退職を強要したという訴えが寄せられました。会話が外に漏れないように通気口を鉄板でふさいだ面談室で、繰り返し退職を迫りました。疲れ果てた男性は病気になり、(中略)上役に『もう自殺するしかない』と叫んだ、とのことです」

「日本IBMでは、ある日突然、正当な理由なく解雇を通告し、そのまま労働者を職場から締め出す『ロックアウト解雇』というやり方がとられている。ある男性は終業時刻のわずか15分前に人事担当者からいきなり解雇通告が読み上げられ、『今日の終業時刻までに私物をまとめて帰れ』と告げられた」

 日本共産党の志位和夫委員長は1日、衆院本会議の代表質問で電機産業におけるリストラ問題に触れ、NECや日本IBMで行われているとされるリストラのやり方について生々しい実態を挙げながら追及し、野田佳彦首相に答弁を迫った。

 NECでは、7月から募集していた早期希望退職制度に2393人が応募した。元NECグループの社員で、産業別労組「電機・情報ユニオン」の森英一書記長が、面談の問題点を指摘する。

「10回を超える面談は異常だ。会社側は『辞めなさい』と言えば退職強要になるので、絶対言わない。仕事がないなどと伝えて精神的に追い込み、希望退職に進ませるのです」

 解雇通告を受けた40歳男性社員が、ロックアウトされた「9月18日17時」を振り返る。

「上司から『ミーティングをしないか』と呼ばれたが、室内には誰もいなかった。数分後、知らない2人が入ってくるや、紙を読み上げた。解雇通告かな、と途中で気づきました」

 会社側が読み上げたのは「解雇予告通知および解雇理由証明書」だ。記されている解雇理由は、「貴殿は、業績が低い状態が続いており……」とわずか3行。

 当日は、終業時刻である「17時36分」までに私物をまとめて退社することを要求され、残った私物は、「後日、会社が郵送する」と告げられたという。

 男性は、同僚2人と「解雇無効」の訴訟を起こした。男性側代理人の弁護士が話す。

「突然通告して即座に退社させるのは、どんな業務をしてきたかという証拠を社員に確保させないため。裁判になっても証拠を手元に残させないためです」

 国会で名指しされた両社は、どんな主張をしているのか。

 NECの広報担当者は「(希望退職の)対象は1万6千人いて誰かは特定できない。本当に11回あったのかは何とも言えません。ただ、複数回に面談が及ぶことはあっても、会社側の説明に納得できない場合に行っているだけで、退職勧奨や退職強要はしていない」。日本IBMは事実関係も含めて、「係争中の案件に関してはコメントを控える」と回答した。

 東京商工リサーチによれば、上場企業が今年これまでに募った希望退職の人数は1万6千人超(11月7日時点)。すでに昨年1年間の倍に上る。

「面談」は他社でも始まっているという。

AERA 2012年11月19日号