結婚相手を決めることにも使えるマッチング理論がノーベル経済学賞を受賞した。果たして、経済学で婚活に勝つことはできるのだろうか。

 結婚における「幸せな組み合わせ」の研究などで今年のノーベル経済学賞をさらったのは、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロイド・シャプリー名誉教授と、米ハーバード大学のアルビン・ロス教授だった。後悔や不倫に結びつきにくい「安定した」マッチングを探す手法(アルゴリズム)にたどりつき、数学的に立証した。

 具体的には、男女10人ずつ、各自の好みを尊重しながら最適な組み合わせを考えた。大まかな仕組みはこうだ。

 まずはじめに、男性が第1希望の女性にプロポーズし、女性は最も気に入った男性のプロポーズを受け入れる。誰からも求婚されなかった女性は、次の機会を待つ。今度は第1希望の女性に断られた男性たちが、第2希望にアタックする。このとき男性陣は、初回で別の男性の求婚を受け入れた女性にもアプローチできる。すでに求婚を受け入れた女性側も、後から求婚してきた男性のほうがいいと思えば、前の婚約を解消できる。

 こうした「受け入れ保留」の仕組みのおかげで、最終的には全員がパートナーを得られる。この手法が最も「安定的」であると、数学的に証明されたというわけだ。なお、ここでいう安定的とは、「実はA男は今の相手よりもB子が好きで、B子も本当はA男が好き」といった状態がないことを指す。すでにこの仕組みは、現実に研修医の配属先を決める際などに応用されているという。

 では実際、ノーベル賞理論は婚活に使えるのだろうか?

 ネット婚活のブライダルネットは昨年末から、年収や年齢、学歴などから相手を絞る「条件検索」をベースにするのをやめ、SNSのような「ソーシャル婚活」に移行した。「条件検索婚活」だけでは、せっかく連絡先を交換しても、結果的にうまくいかないケースが多かったからだ。ソーシャル婚活はブログ機能や、お気に入りの店などを地図上で共有できる「いまココ!」といった、その人の趣味や関心などを重視してマッチングさせる。

「婚活」時代』の共著があるジャーナリストの白河桃子さんは、「条件検索では、女性が希望する男性は数%しかいなくなってしまう。婚活疲労を招いた条件検索の時代は終わりです」

 だが冒頭のマッチング理論に戻れば、参加した人全員に「最良の」好みの相手を組み合わせることはできない。「この相手とは絶対嫌だ」と言わない妥協も必要かもしれない。

AERA 2012年11月5日号