世間を賑わせた22人の「その後」を長期取材。意外な真実やドラマが浮かび上がる!

2022/09/22 20:00

『人生はそれでも続く (新潮新書)』読売新聞社会部「あれから」取材 新潮社
『人生はそれでも続く (新潮新書)』読売新聞社会部「あれから」取材 新潮社


 新聞などで取り上げられるニュースは、ある出来事や人物の「今」を切り取って報道されることが多いもの。しかし、出来事にも人にも必ずといっていいほど「その後」があります。
 書籍『人生はそれでも続く』は、読売新聞が2020年2月から原則月1回のペースで朝刊に掲載している連載「あれから」をまとめた一冊。「あれから」は、世間を賑わせたニュースの当事者がその後どうなったのかをたどってみるという企画です。
 「あの人は今」的な特集はよくありますが、同書が他と大きく異なっているのは長期にわたる綿密な密着取材をおこなっている点。「ぜひこの人に話を聞いてみたい」という人物を探し出したら、短くても3か月、長い場合は1年近くをかけて当事者の話に耳を傾け、さらにはカギを握る周囲の関係者にも話を聞くよう努めているといいます。表層的な「あの人は今」企画で終わらないため、圧倒的な説得力があります。
 たとえば同書のなかで、多くの人の記憶に残っているだろう人物のひとりが、作曲家の新垣 隆さん。2014年に開いた記者会見で、自身が「耳が聞こえない作曲家」として話題を集めた佐村河内守さんのゴーストライターであることを明かし、一躍時の人となりました。しかし、近況について詳しく知る人は少ないのではないでしょうか。
 騒動後、新垣さんは音楽とは関係ないバラエティ番組に持ち前(?)の「断らない(断れない)」スタンスで露出を続け、ピアノの即興演奏の実力も広く知られるようになり、騒動から1年が過ぎた頃にはオファーが次々と入るようになったそうです。もともと音楽仲間の間でその実力は認められており、業界では一目置かれる存在だった新垣さん。2018年には桐朋学園大学の非常勤講師に復帰し、2020年からは大阪音楽大学の客員教授やオンラインの「シブヤ音楽大学」学長も務めるようになりました。今ではじゅうぶん、自身の名前で音楽の道を突き進んでいることがわかります。音楽好きの人なら、川谷絵音らとともにジェニーハイとして活躍していることも知っているかもしれません。
 同書には、生死にかかわる大きな事件の当事者になった人も登場します。2010年8月、会社員の多田さんは埼玉県の両神山で遭難し、壮絶な13日間を生き延びたことで話題となりました。
 2001年9月、ニューヨークの世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機が突っ込んだ際、90階にあった中国銀行ニューヨーク支店で支店長をしていた久保津さんは、7名の部下たちに即座に避難指示を出し、ビルが崩壊する直前に脱出しました。
 2015年9月、埼玉県熊谷市に住んでいた加藤さんは、最愛の妻と娘2人を殺害され、突如遺族として生きることになりました。人生観どころか死生観まで一変してしまうような事態に直面した人々の言葉には大変な重みがあり、なにげない日常の大切さに気づかされます。
 他にも、日本初の飛び入学で大学生になった17歳(1998年)、「マリアンヌちゃん裁判」で脚光を浴びた6歳(1956年)、赤ちゃんポストに預けられた男児(2007年)、名回答がベストセラーとなった「生協の白石さん」(2005年)、「王子様」という本名から改名した18歳(2019年)など計22人の「あれから」が掲載されています。これらの人々が発する貴重な言葉の数々は、読む人に大きな余韻を残すことでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]

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