国際派俳優・渡辺謙さんが、ニューヨーク・ブロードウェイで上演される舞台『王様と私』(原題:『The King and I』)で主演を務めることが話題になっています。渡辺さんは、役作りで、既にヘアスタイルをスキンヘッドにするなど、3月12日からのプレビュー公演に備えて気合充分な様子。



 ところで、彼の記念すべきブロードウェイデビュー作となる『王様と私』とは、どのようなミュージカルなのでしょうか?



 同作といえば、劇中で使われている名曲「Shall we dance?  (シャル・ウィー・ダンス)」が有名。同曲は、社交ダンス教室を舞台にした、周防正行監督・草刈民代さん主演の映画『Shall we ダンス?』のタイトルとテーマ曲に使われていることでもおなじみです。



 原作は、実際にタイ国王に英語教師として仕えたイギリス人女性、アンナ・レオノーウェンズの手記を、作家のマーガレット・ランドンが小説化したもの。舞台版と映画版の両方で王様を演じたのは、スキンヘッドが印象的な個性派俳優、ユル・ブリンナー。ちなみに英・ロンドンでの舞台公演では、日本の歌舞伎俳優・松本幸四郎さんが王様を演じたこともあります。



 西洋と東洋の文化のギャップを描いた『王様と私』ですが、原作となったアンナ・レオノーウェンズの手記には創作や誇張も多く、モデルになった実在の国王ラマ4世の実像とはあまりにもかけ離れていることから、タイでは舞台版も映画版も上演禁止となっているのだとか。



 物語の舞台は19世紀のタイ。王様の大勢の子どもたちの教育のために、イギリス人女性のアンナが家庭教師として招かれるところから始まります。封建的な考えの王様と、西洋的価値観で王宮を変えようとするアンナ。異なる価値観を持つ2人は当初は反発し合いますが、しだいに心を通わせていきます。



 と、あらすじだけ書くと、かの有名なミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の、厳格なトラップ大佐一家に、家庭教師として派遣された修道女マリアの物語を思い出される方も多いでしょう。



 本書『ミュージカルに連れてって』の著者・萩尾瞳さんも、価値観の異なる世界へやってきた家庭教師が、最初は周囲と対立しながらも、最後には理解し融和して行くという大筋や、ミュージカルナンバーの構成について、『サウンド・オブ・ミュージック』と共通点があると指摘しています。



 それもそのはず、『王様と私』も『サウンド・オブ・ミュージック』も、作曲家リチャード・ロジャーズと作詞家オスカー・ハマースタインという、同じコンビが手掛けた作品なのです。作品の根底には、"西洋と東洋の出会い"があると言われています。



 さて、日本を代表する俳優・渡辺謙さんが、アメリカのショービジネス界の頂点たるブロードウェイで、一体どのような王様を魅せてくれるのでしょうか。本公演は4月16日(木)~7月5日(日)まで、ニューヨークのリンカーン・センターにて上演されます。興味のある方は、まずニューヨーク行きの往復航空券をお買い求めください。