人間行動学者でバンド「かえる目」のボーカリストとしても活動中の細馬宏通氏が、斬新なアプローチで音楽の仕組み読み解く興味深い本を上梓しました。

 タイトルは『うたのしくみ』。同書には、マルチクリエイター・伊藤ガビン氏主宰のウェブサイト「MODERN FART(モダンファート)」にて、細馬氏が不定期に連載していたコラム「歌のしくみ」に加え、書き下ろし記事、さらにこれまで雑誌やウェブに書いた音楽書評・コラム・CD評・ライナーノーツの数々が一挙に収録されています。



 細馬氏自身が、「『お正月』から『あまちゃん』まで、ブルースの始まりからサンバやボサノヴァまで、時代もジャンルもかなり広範囲の内容になった」と述べているように、同書で取り上げられる楽曲は、ユーミンや岡村靖幸、ジュディ・ガーランド、チャック・ベリー、ビートルズやストーンズ、ポール・サイモン、そして初音ミクやPerfume......と、古今東西のアーティスト達が幅広く網羅されています。



 また、その切り口も斬新そのもの。たとえばPerfumeの「ポリリズム」について。かつてミュージシャン・近田春夫氏は自著『考えるヒット』の中で、同曲を「音」の観点から分析していましたが、細馬氏は「言葉」や「語尾」の観点から分析しています。



「『まるで恋だね』『うそみたいだね』と、それまでは何度も親しげに問いかけてくる『だね』が、突然『だ』という叙述に変わる。『ああプラスチックみたいな恋"だ"』。そのときに何が起こるのか、しばらく考えてみよう」(『うたのしくみ』より)



 歌詞の分析を通して日本語の特性に注目し、またブルースやロックンロールの成り立ちや構成を解説しながら、実際に言葉や韻から楽曲を分析していく過程は、私たちの歌との関わり方に、新たな視点を投げかけてくれるものでしょう。



「ことばの細部がどんな声になり、それが歌のしくみをどう形作っていくかを知るには、テキストになった歌詞だけではなく、歌そのものにたずねてみないとわからない」と細馬氏は言います。



 言葉から見えてくる「うたのしくみ」とは、一体どのようなものなのでしょうか。現在、「MODERN FART」では、第1回「サンバがサンバであるからには」、第8回「歌になる理由」、第15回「深く深く」、第17回「感電する足」を閲覧してみることができます。気になる方は、チェックしてみては?



リンク:MODERN FART http://modernfart.jp/