世界最大の都市・ニューヨーク。外国人旅行客や移民などが多いという街の特性もあり、電車の中やスーパー、カフェなどで偶然出会った見知らぬ者同士でも、会話が弾むことが多々あるそうです。

 『ニューヨークのとけない魔法』シリーズなどの著作がある作家・エッセイストの岡田光世さん。その岡田さんによる最新作のエッセイ『ニューヨークを探して』が発売されました。本書は、ニューヨーク在住の著者と、街中で出会った人々とのちょっとした交流から生まれる、心暖まるエピソードが満載です。

 例えば、著者が街中で出会った、さりげない親切。あるとき電車で著者に席を譲ろうとしてくれた男の人。なぜ席を譲ってくれたのか、著者が彼に尋ねた時に、彼は次のように言ったそうです。

「I was just trying to be nice.(何かいいことをしようと思っただけさ)」

 著者は、そのような状況の生まれるニューヨークについて、「地下鉄でそばにすわっていた人たちは、その人と私がたった今、出会ったとは、想像もしないだろう。でも、それがニューヨークという街でもある」と述べています。

 また、ニューヨークに住む人たちは、如何に自分たちの住む街を愛しているかを著者に語ります。

「ほかの街にはまねのできない何かが、ニューヨークにはある。活力と、ここに住む人たちの仲間意識みたいなものかしら。それはほかの街では感じたことがないわ」

「ニューヨークはいつも何か新しいことが起きて、決して古くならない。この街で退屈するなんてことは、有り得ないのよ」

 人間味溢れるエピソードの数々を通して、ニューヨークのたくさんの魅力が伝えられる本書。ニューヨークの街、そして、そこに暮す人々の考え方や何気ない行動から、日本人が学ぶべき点も多くあるののかもしれません。