(C) 2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会
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 映画「百円の恋」、連続ドラマ「拾われた男」、さらには今秋放送されるNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でいずれも脚本を担当するなど、話題作を次々手掛ける足立紳さん。

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 そんな足立さんが監督を務め、昭和の終わりの地方都市を舞台に少年たちの葛藤や奮闘を描いた映画「雑魚どもよ、大志を抱け!」が3月24日より全国順次公開中。足立さんが約20年、温め続けてきた企画が形となった。

 主人公は少し弱気なところもある瞬をはじめとした7人の小学生男子。仲間たちとワイワイ楽しく騒ぐ日々のいっぽうで、いじめや不良中学生からの理不尽な脅し、家庭環境、進路など、それぞれの抱える事情もある。仲間のため、そして自分自身のため、瞬たちが考え、行動し、勇気を振り絞った先にあるものは……。

 子供たちを主人公にした作品を製作した理由について、足立監督はこう語る。

「ケン・ローチ監督の『ケス』や、親子ではありますが『自転車泥棒』、こういった素朴な子供が出てくる映画、その子たちを見ているだけで飽きないなっていう映画をいつか作ってみたいという思いがずっとあったんです」 

 1988年という時代設定については、

「元々考えていた物語の構想を、現代を舞台にした小説にしてみたこともあったのですが、どこか違和感があって。あと昭和という言葉が今ではネガティブな意味でしか使われなくなってしまったが、本当にそうなのか?アップデートはしなければならないが、良かったこともあるのでは?という思いもあってです。

 メイン主人公の瞬、父親に犯罪歴のある隆造、宗教二世のいじめられっ子・トカゲ、映画監督を夢見る映画マニア・西野など、個性豊かな少年たちが作中には登場する。

「当時、自分の周りにいた何人かのキャラを合わせてみたり、そのままのやつもいたり。映画好きの西野以外は、なんとなくモデルはいます。怖い中学生なんかも、あの人は怒らせちゃいけないみたいな怖い人もいましたし。僕は完全に主人公の瞬のタイプですね(笑)。イジメなんかを見て見ぬ振りする卑怯者だった」

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