大切な家族が亡くなっても、自宅に遺体を安置する場所がない……。都市部を中心にそんな悩みを抱える人たちが増えている。家族が集まるまで遺体をきれいに保管したい、その場で式も済ませたい。そうした声に応えるサービスが広がっている。
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「ちょっとご遺体を預かってもらえませんか?」
JR荻窪駅から歩いて約10分。幹線道路沿いにある「安置ルーム『やすらぎ』」(東京都杉並区)が2015年にオープンしたのは、こんな一言からだった。
かつては人が亡くなると、葬儀まで自宅で安置するのが主流だったが、時代の変化とともにできなくなりつつある。この施設では、自宅に代わって遺体を保管する。
運営元の「愛典福島屋」の取締役・佐藤法彦さんが言う。
「理由は三つあります。一つはマンションや団地などのお宅にご遺体を搬入できないという物理的なもの。二つめは故人が一人暮らしで親族が遠方に住んでいる場合です。故人宅にご遺体だけ安置するわけにはいきません。三つめは気温です。冬場は暖房なしで2~3度になりますが、夏はクーラーを最も強くしても室温は18度ほど。ドライアイスを使ったとしても、ご遺体を適切に保管する必要があります」
同社は90年の歴史を持つ葬儀会社。地元の人たちの要望を受けて、仏具のショールームだった1階を改装し、保冷装置で遺体を一時保管する「霊安スペース」と、家族葬も行える「安置ルーム」をつくった。保管料は1泊7500円。遺体を2~3度に保ち、保管期間中は面会もできる。
「平均3~4日間お預かりすることが多いですね」と佐藤さん。
コロナ禍で簡素な葬儀が好まれるようになったことも、施設の需要を高めているという。
「『ここで式もできないの?』と相談を受けることが増えました。『安置ルーム』は10人までの家族葬ができます。昨年5月には2階の事務所を改装し、葬儀までの時間を過ごし、会食もできるラウンジスペースをつくりました。コロナの影響で、『ここで式までできれば十分』というお客様がさらに増えました」