
それでも森友問題の公文書改ざんや桜を見る会をめぐる公私混同などが噴出。2020年夏には、新型コロナウイルスの感染拡大で第2次政権は行き詰まり、7年8カ月で幕を閉じた。
安倍氏は首相退陣後も政局に大きな影響力を維持。21年秋のポスト菅義偉首相を決める自民党総裁選では、第1回投票で高市早苗元総務相を担いだ。高市氏が3位にとどまると、岸田氏と河野太郎元外相との決選投票では岸田氏支持に回り、岸田政権発足に貢献。石破氏と連携した河野氏に、「反安倍」の動きを感じ取っての判断でもあった。
岸田首相は、安倍氏の意向をくんで高市氏を政調会長に起用。安倍氏側近の萩生田光一氏を経済産業相に抜擢(ばってき)した。岸田首相は、麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長という自民党の執行部と最大派閥を率いる安倍氏に乗っていれば、政権は安定するという思いがあった。
ところが、安倍氏の死去で最大派閥の結束が怪しくなってきた。
派閥会長候補には下村博文前政調会長、萩生田経産相、西村康稔前経済再生相らの名が挙がる。
ただ、自民党の幹事長経験者に言わせると、「3人とも、帯に短し襷(たすき)にも短しだ」という。当面は3氏に塩谷立・元文部科学相らも加えた「集団指導体制」を続けることになりそうだ。
菅前首相が勉強会を旗揚げして独自のグループを結成する動きもあり、他派閥・グループも巻き込んで、派閥再編が進む可能性も出てきた。保守派の安倍氏とリベラルの岸田氏との協力関係を重視してきた岸田政権の足元が揺らぎかねない。
一方、参院選で自民党は改選(125議席)の過半数となる63議席を獲得。13議席の公明党と合わせ、与党は引き続き参院の圧倒多数を占めることになった。野党は立憲民主党が改選23議席から17議席に退潮。共産党も議席を減らした。
■改憲勢力2/3 どう動く岸田氏
自公両党は衆院でも圧倒多数を維持。日本維新の会や国民民主党を含む憲法改正に前向きな「改憲勢力」は衆参ともに3分の2を上回り、憲法改正も可能な政治情勢となってきた。
岸田首相はどう動くのか。参院選直後の記者会見で岸田首相は「改憲論議を進めたい」と述べたが、公明党の山口那津男代表は「憲法論議では国民の合意が大切」と慎重姿勢を崩さない。安倍氏が健在なら、改憲勢力の伸長を受けて憲法改正の議論を牽引(けんいん)しただろうが、今の自民党では安倍氏に代わって憲法論議を引っ張る実力者は見当たらない。清和会の動きや自民党役員人事・内閣改造などを見極めようというのが自民党内の大勢だ。