札幌・ススキノ地区 (c)朝日新聞社
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「ウイルス自滅説では、なぜ日本でだけウイルスの酵素が変化しているのか説明がつきません。仮に事実だとしても、国外から新しいウイルスが入ってきたら、また感染が拡大するだけです」(久住医師)

 ならば、感染者数の激減は菅義偉前首相の主張どおり「ワクチン効果」だったのか。だが、約7割の人がワクチン接種を済ませている“ワクチン先進国”英国では現在、1日の新規感染者数が4万人前後で高止まりしている。また、人口の8割以上がワクチン接種を終えているシンガポールでも連日3千人を超える新規感染者が出ており、病床が逼迫(ひっぱく)し始めている。両国ともワクチンによる中和抗体の効果が弱まった可能性を考え、3回目の接種(ブースター接種)を進めているが、まだ効果は出ていないようだ。

 日本でもブースター接種が検討され始めている。岸田文雄首相は総選挙前の参院本会議で「早ければ12月から開始することを想定して準備する」と述べた。政府の構想としては、まず医療従事者と高齢者からブースター接種を予定しているという。

 こうした状況について、「早めに備えていかないと英国と同じ状況になる危惧がある」と指摘するのは筑波大学大学院の倉橋節也教授だ。倉橋教授はAI(人工知能)を用いた社会シミュレーション研究の第一人者で、新型コロナウイルス感染のシミュレーションも行っている。

 倉橋教授は言う。

「日本はワクチン政策で成功したように思っている人がいますが、接種の開始が遅れたことは失敗です。8月の感染拡大は、ワクチン接種が早ければ防げていたかもしれない悲劇でした。今は抗体保有率が高まったことで拡大が収まっていますが、安心はできません。ちょうど英国などのワクチン先進国の1~2カ月前と今の日本が同じような状況と考えると、今後、抗体の効果が弱まれば再び感染の波が来る。この状況を続けるためには、早めにブースター接種を始めることが必要でしょう」

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