田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社
田原総一朗・ジャーナリスト (c)朝日新聞社

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、温室効果ガス実質ゼロに向けて、明確な道筋が示されていないと指摘する。

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 いま、与野党の間で、アベノミクスの成果について、是か非かの論議が交わされているが、実は、2018年に自民党総裁に3選された時点で、安倍首相自身、アベノミクスの成果があがっていないことは百も承知していた。

 この時点で、経団連会長をはじめ、トヨタ、NTT、パナソニック、三菱商事、三井物産など大企業の経営者たちは、いずれも、今のままの状態では、日本企業が10年間持続するのは困難だと、強い危機感を抱いていて、そこで安倍首相は、当時信頼していた西村康稔・経済再生担当相を起用して、日本の産業構造を抜本的に改革するためのプロジェクトチームを19年に発足させた。

 経済産業省、厚生労働省などの30代後半の官僚や、斎藤健氏、村井英樹氏といった自民党の国会議員、そして冨山和彦氏らエコノミストで構成されていた。私も協力した。

 反省を込めて記したいのだが、この時点で、大企業の経営者たちからも、官僚や自民党の国会議員たちからも、地球環境の問題が全く出ていなかったのである。

 実は、15年12月にパリ協定が定められ、気温上昇を1.5度に抑えるということになった。

 そして、その後、ヨーロッパの先進国は、いずれも2050年温室効果ガス実質ゼロを宣言したのだが、トランプ大統領のアメリカと日本は、何の意思表示もせず、繰り返しになるが、19年の段階でも、日本では地球環境問題はタテマエでしかなかったわけだ。

 なお、18年に日本政府は、2030年における電力の主なエネルギー源と、その比率を発表した。

 太陽光、風力などの再生可能エネルギーが22~24%、原子力発電が20~22%、そして50%以上が、石炭、石油などのCO2エネルギーであった。

 私は、自民党の幹部5人に、原子力発電が20~22%というと、30基以上を稼働させなければならないことになるが、そんなことが可能だと考えているのか、と問うた。すると5人とも、困惑した表情で下を向いてしまった。答えはなかった。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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