ミッツ・マングローブ「ドラマが失くした日常と『篠ひろ子ロス』」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ミッツ・マングローブ「ドラマが失くした日常と『篠ひろ子ロス』」

連載「アイドルを性せ!」

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ミッツ・マングローブ

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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、篠ひろ子の引退について。

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 私にとって、日本ドラマ界における最大の損失のひとつは「篠ひろ子の引退」です。とは言え篠さんが正式に引退表明をしたことはありません。50歳になる前年(97年)に主演した作品を最後に、忽然と私たちの前から姿を消したのです。あれから早20余年。現在は夫の伊集院静さんとともに故郷の仙台に住んでいるとか。以来、定期的に訪れる「篠ロス」を、私は過去の名作たちを穴が開くほど何度も観て凌いできました。

 女優・篠ひろ子が頭角を現したのは、70年代に一世を風靡した久世ドラマの金字塔『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』だそうです。ちなみに同世代の小川知子さんやいしだあゆみさんらと同じように、篠さんも60年代に歌手デビューしています。しかし篠さんの場合、ヒット曲に恵まれないまま女優へと転身したため、最初から主演級というわけではなく、その魅力と人気が爆発したのは80年代に入ってからでした。

 まずは84年に放送された『金曜日の妻たちへII』。下ネタ好きで化粧っ気のない意地悪主婦を演じたのを皮切りに、『毎度おさわがせします』では思春期の息子を持つハイテンションな母親、さらに『金曜日の妻たちへIII』では夫を親友に寝取られる品行方正な妻、『誘惑』では夫の愛人に家庭を崩壊させられる一方で自身も若い男に入れ上げていくブルジョワ妻など、バブル景気を背景に当時30代後半から40代前半だった「団塊の世代」を描いた作品においては欠かせない存在となりました。今も観返す度に、彼女の凛とした立体感、潤沢だけど押し付けがましくない色気、親しみやすさの中に垣間見える冷たさ、独特な抑揚の台詞回しに、たまらない心地良さを感じます。


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