「いいことばかりじゃなくても大丈夫と思える」コロナ禍に日記を読む効用 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

「いいことばかりじゃなくても大丈夫と思える」コロナ禍に日記を読む効用

週刊朝日#読書
トミヤマユキコさん (c)朝日新聞社

トミヤマユキコさん (c)朝日新聞社

 不安が募るコロナ禍をどう生きるべきなのか。そのヒントは人々との日記に隠れている。ライター・研究者のトミヤマユキコさんが「今読みたい日記」を紹介する。

*  *  *
 ステイホームを始めた当初、フィクション全般が読めなくなり、すごく困った。先の見えない状況に怯えまくりで、集中力がゼロだったのだろう。そんなときでもするする読めたのが日記だった。ひとつひとつの文章が短い。忘れちゃっても先に進める。それより何より、いいことばかりじゃなくても大丈夫と思えることが、とても助けになった。

 植本一子『家族最初の日』(ちくま文庫)は、写真家の植本さんによる家計簿を兼ねた日記である。家計簿つきなのは、石田家にお金がないから。散財するのは、主に夫であるラッパーのECDさんだ。

「レコードレコードレコードレコード、レコードを買っている、今日も!!」(2010年3月26日)

「カツ丼ずるい!」(3月31日)

 ECDさんが外出先でささやかな贅沢をすると、子育て真っ最中で家にこもりがちな植本さんが怒る。しかし、この夫は妻のためにアイスを買い、育児を積極的に引き受ける人でもあるのだ。それでも、ムカつくときはムカつくと書く。率直だ。日記は誰にでも書けるが、ここまで率直に書くのは難しい。人に見られるとなれば尚更である。その点、植本さんの日記は、まるで写真を撮るように書かれていて、余計なものの入り込む隙がない。貧乏家族の節約日記だと思っていると、思わぬところに連れて行かれる愉悦がある。

 スズキロク『よりぬきのん記』(自費出版)は、イラストレーターのスズキさんが、ツイッターの鍵つきアカウントでひっそり連載しているマンガ日記を、紙の本にまとめたものだ。

 彼女の夫である矢野さんは、とても多忙な高校教師&批評家。しかし彼女は、帰宅した夫に遊ぼうと声をかける。そしてウザがられている。でもめげない。

「おやっ何をしてますか? 妻と遊びますか?」
「妻はこのぶたと遊びなさい」
「きゃっきゃっぶたのぬいぐるみ!/ハッ 夫が妻と遊んでないぞ」
「そのぶたは僕が去年韓国でわざわざ買ったぶただぞ/つまりすでに妻と遊んだも同然です」
「そうだったのか ぶたと遊ぼう」(2020年2月23日)


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい