高齢者へのワクチン優先接種がスタートし、各地で予約が殺到する中、副反応を恐れ接種をためらう声もある。接種は任意で個人の判断によるが、メリットやリスクに対する国の説明は十分とは言えない。ワクチンをめぐるモヤモヤを追った。
【写真】中国のワクチン接種券とワクチン接種後の「健康コード」表示画面
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「接種券が送られてきたけれど、ワクチンは打ちたくない」
東京都在住の田中幸子さん(仮名・73)。各地で新型コロナウイルスワクチンの高齢者への優先接種が始まり、田中さんの元へも4月22日、居住区の自治体から郵送で接種券が届いた。田中さんは、コロナ禍になってから、外出は極力控えてきた。買い物に出る以外、一日のほとんどを自宅で過ごしている。幸いなことに持病もなく健康だ。
「だから慌てて接種しなくても、もう少し様子を見たい。新しいワクチンだから、思ってもみない副反応が起こる可能性もあるかもしれないし……」(田中さん)
そう考えるのは、ワクチンについて説明する厚生労働省のホームページにある、この文言も理由の一つだ。「本ワクチンは、新しい種類のワクチンのため、これまでに明らかになっていない症状が出る可能性があります」──。これを見て接種をためらうのは、人の心理としてごく普通のことかもしれない。
一方、「今すぐに接種したい」という声も多い。3度目となる緊急事態宣言が発令され、重症化率や死亡率が高いとされる高齢者にとって、ワクチンは頼みの綱でもある。現に各地の自治体では予約の申し込みが殺到し、電話回線がパンクする事態が続出している。
「接種するかしないかは、あくまで個人の判断。接種することのメリットとリスクをきちんと知り、それぞれが判断すべき」
免疫学が専門の宮坂昌之教授(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授、大阪大学名誉教授・73)は、こう話す。現在、日本で薬事承認されているファイザー社のワクチンの発症予防効果は9割以上とされ、約4~6割とされるインフルエンザワクチンの有効性と比べても高い効果が見込める。だが、一般にワクチン接種によるリスクはゼロではなく、これはファイザー社のワクチンでも同様。「高い発症予防効果が見込めるが、ゼロリスクではない」ということをどう捉え判断するかが、個々に委ねられている。