会場建設費は国と大阪府・市、経済界で3分の1ずつ分担する。経済界は、関西経済連合会、関西経済同友会、大阪商工会議所を中心に会員企業から寄付を集めてきたものの、負担増への警戒感があった。

「今さらになって集め始めるのか。できる限りの努力はするが、できないものはできない。『(会員企業に出資を)もう10%お願いします』とはよう言えん。今後は全国津々浦々で協力してもらいたい」

 昨年11月、関経連の松本正義会長(住友電気工業会長)は記者会見で語気を強めた。コロナ禍で業績悪化の企業も多く、負担増となった場合は、日本経済団体連合会の会員企業による寄付などが必要だと牽制(けんせい)していた。

 けれども、翌12月には増額されることが明らかになり、国と大阪府・市、経済界でそれぞれ200億円の追加負担が生じた。あくまで関経連は、追加の負担分について、他地域も含めてこれまでに出してもらっていない企業にお願いしていく考えだ。

 地元の事情を踏まえて、井上信治・万博担当相も同月、経団連の古賀信行・審議員会議長(野村ホールディングス特別顧問)と面会し、費用負担への協力を要請。古賀氏は「精いっぱいの努力は、他の経済団体を含めて協力しながらやって参ろうと思う」と応じつつも、「様々な工夫も必要だろう」とした。

 政財界で足並みがそろっているとは言いがたい。

「情報が全く入ってこない。金さえ出せばいいと思われているのか」(大手企業幹部)という声も漏れる。これまでは万博の開催主体である国と、万博協会が中心となって準備を進めてきた。「蚊帳の外に置かれた」と考える財界人も少なくなかったのだ。

 関経連の村尾和俊副会長(NTT西日本相談役)が年明けの会見で「今年からは(国や行政、万博協会による)検討の場に具体的に参画して、様々な意見を提起していきたい」と発言したのも、そうした財界の心情によるものとみられる。

 関西財界にとって、もう一つ気がかりなのが万博後のIR計画だ。大阪府・市など自治体が国へ誘致を申請する時期が昨秋、9カ月延期されて今年10月以降になった。このため当初の想定よりもずれ込み、IRの開業は20年代後半とみられている。

次のページ