一時はIRの開業後に万博を催し、経済効果を高めようとも検討されていただけに、今の状況は“大誤算”とも言える。ただ、「建設工事の段階では、IRと万博が分かれて絶対によかった」(大商の尾崎裕会頭<大阪ガス相談役>)と、IRの遅れを歓迎する見方が財界に出始めたのも事実だ。建設作業員を確保するハードルが高かったためだ。さらに、想定外だった新型コロナへの対応も余儀なくされている。

 そもそも25年は、IR開業や万博開催が見込まれていたことに加え、「大阪都」への移行も重なろうとしていた。

 大阪市を廃止して四つの特別区に再編する「大阪都構想」は周知のとおり、昨年11月の住民投票で反対多数で否決された。「都構想」をはじめ、IRや万博などによる経済成長が“セットの政策”とされてきたため、大阪府・市が軌道修正を図りながらどのような将来ビジョンを示そうとしているのか、はっきりしていない。

 ある財界幹部は「(都構想の否決で)大阪府・市が精力を注がないといけない事案がなくなった。これで万博に注力してくれるかも」と、逆に割り切った姿勢だ。

 いまだ収束が見通せない新型コロナとの闘いも続いている。政府による2度目の緊急事態宣言で大阪、兵庫、京都の3府県も対象地域となり、関西経済への影響は必至だ。

 訪日外国人など多くの観光客でにぎわい、新たな技術開発に向けた関西経済の“起爆剤”となるはずだった万博やIR。その前提が激変した今、地元は当初描いた夢と現実の間で翻弄(ほんろう)されている。(朝日新聞取材班)

週刊朝日  2021年2月12日号