5-ALAの新型コロナへの効用などについて講演する長崎大学大学院の北潔教授/撮影=大崎百紀
5-ALAの新型コロナへの効用などについて講演する長崎大学大学院の北潔教授/撮影=大崎百紀
5-ALAを製造しているネオファーマジャパンの工場内(静岡県袋井市)/同社提供
5-ALAを製造しているネオファーマジャパンの工場内(静岡県袋井市)/同社提供

 新型コロナウイルス感染症の国内の感染者が出て1年が経つ。しかし、事態は収束を見るどころか、感染者が増える一方だ。死者も増えており、有効な治療薬の開発が待たれる。そんな中、一筋の光が見えてきた。5-アミノレブリン酸(5-ALA)という天然のアミノ酸の一種が、コロナへの効果が期待できそうなのだという。

【写真】5-ALAを製造しているネオファーマジャパンの工場内

 5-ALAは、ヒトの体内にある物質で、加齢とともに減少する。5-ALAを体内で作る力が落ちると酸素を使う力が下がり、エネルギーも作れずに免疫力が極端に落ちる。体温も下がり、病気の元にもなる。

 この5-ALAが知られるようになったのは約10年前。人工的に作れることがわかり、5-ALA含有のサプリメントや化粧品が登場した。医療の現場では、ブルーライト照射とあわせて脳腫瘍(しゅよう)と膀胱(ぼうこう)がんの診断薬として活用されるようになった。海外では皮膚がんの治療薬にもなっている。

 そして現在、新型コロナの予防と治療に、この5-ALAを活用しようと研究を進めているのが、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授だ。北教授は3大感染症の一つ、マラリアの治療薬の開発中で、その過程でこの5-ALAが新型コロナへの効果が期待できることがわかった。

 昨年2月から研究を始め、5月に試験管内の実験で新型コロナウイルスの増殖の抑制効果を確認。未承認や適応外の薬の効果を調べる特定臨床研究を開始させる段階に入った。

 5-ALAが新型コロナウイルスを抑える仕組みはこう考えられている。

 一定量の5-ALAを体内に投与すると、ウイルスの表面にあり、人の細胞に感染する際に重要な役割をする突起のような「スパイクたんぱく質」につくことで、ウイルスの細胞への侵入を防ぐ(予防)。すでに感染した人に投与すれば、ウイルスの増殖を抑え、また体内でのサイトカインストーム(免疫系の暴走)を抑制する(治療)。

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「5-ALA投与3日でICUから一般病棟へ移動」との症例報告も