陥没により東京都調布市の住宅街の道路にぽっかり開いた穴 (c)朝日新聞社
陥没により東京都調布市の住宅街の道路にぽっかり開いた穴 (c)朝日新聞社
11月21日には付近の地下に新たな空洞が見つかり騒然となった (c)朝日新聞社
11月21日には付近の地下に新たな空洞が見つかり騒然となった (c)朝日新聞社
11月5日に開かれたNEXCO東日本の記者会見 (c)朝日新聞社
11月5日に開かれたNEXCO東日本の記者会見 (c)朝日新聞社

 静かな住宅街の道路に、ぽっかりと開いた大穴。付近では謎の「地下空洞」が次々と見つかり、はるか地下で行われたトンネル工事との関連性が疑われている。不気味な雰囲気を醸し出す深い穴をのぞき込むと、規制緩和によって急速に進んだ地下開発の「暗部」が浮かび上がってきた。

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「前日まで買い物で歩いていた道なのに、陥没するなんて。薄い氷の上を歩いているようなものだったんですね」

 陥没現場近くで暮らす菊地春代さん(65)は、本誌の取材にこう語った。

 10月18日、東京都調布市の住宅街で、幅5メートルほどの市道が突如、陥没した。穴は深さ5メートルほどで、大きさは約6メートル×約5メートル。けが人は出なかったが、もし真上に人がいたら無事ではすまなかっただろう。陥没現場の地下では、東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事が行われていた。菊地さんは、陥没当時をこう振り返る。

「隣の旦那さんに『大変だ、家の前が陥没している』と言われて急いで見に行くと、道路に幅30センチくらいの亀裂が入ってへこんでいた。亀裂は1時間くらいでみるみる広がり、バシャン!という音とともに道路が落下しました」

 騒動は続いた。工事を行う東日本高速道路(NEXCO東日本)が付近の地盤を調査すると、11月3日には長さ約30メートルの空洞が、21日には約27メートルの空洞が見つかったのだ。空洞の近くに住む近田真代さん(73)が言う。

「近隣の家がきしむし、水道管からは水漏れもあった。NEXCOの人からは『避難準備をしてください』と言われ、孫が泣きだしたことも。この先、何年か後に陥没するかもわからず、不安とともに暮らしています」

 付近の地下40~50メートルをトンネル工事の掘削機「シールドマシン」が通過したのは、陥没の1カ月以上前の9月14日のこと。このときから異変は感知されていた。前出の菊地さんが話す。

「9月上旬から細かい振動を家の中で感じ、気のせいかと思ってテーブルのペットボトルを見たら水面が揺れていた。低周波も発生しているのか、『家の中にいると気持ちが悪くなる』と言って外に出る住民の方もいました。私は事故前から、不安を訴えるご近所の意見をとりまとめて事業者にメールを入れていたんです」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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