室井佑月・作家
室井佑月・作家
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家の室井佑月氏は、学術会議問題における報道の在り方に疑問を呈する。

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 国会の予算委員会で、菅義偉首相は官僚から渡されたメモばかり読んでいる。ご自分の頭で考えていないから、トンチンカンな答えが出るのか? あたしたちをけむに巻きたい作戦なのか? ニュースではそこは流していないけど。

 たとえば、日本学術会議の新会員候補の任命拒否について、菅首相は、「総合的、俯瞰(ふかん)的な観点に立ち判断」「多様性が大事」といっているが、それがどういうことであるのかあたしたちに説明をできずにいる。正当性を明らかにできない。

 あげくは、「人事のことは詳細は差し控える」と居直りだ。問題があるから、問われているのにである。

 そう、学術会議の任命拒否は明らかに異常だ。菅首相のいうことは、すべて間違っている。

「学術会議が正式の推薦名簿を提出する前に、さまざまな意見交換の中、内閣府の事務局などと学術会議会長との間で一定の調整が行われていた」

 内閣府と事前調整? それって学問への政治介入ではないか。

 菅首相は推薦リストを「見ていない」といい出した。で、事前調整をしたのは、「たぶん、杉田官房副長官」だと。

 日本学術会議法によって首相でさえ任命拒否してはいけないのに、官房副長官がそんなまねしていいの? ダメに決まってるだろ。

 しかし、11月10日付の毎日新聞(電子版)に、「自民、学術会議問題で『逃げ切り』に自信 『批判の電話も少ない』 月内に集中審議」という記事が載った。見出しの通り、自民党は、学術会議問題で国民の批判は広がっていないと安堵(あんど)している模様。

 記事の中にも書かれていたが、「毎日新聞などの7日の世論調査によると、首相による学術会議の新会員候補の任命拒否を『問題だ』と答えた人は37%」だという。

 つか、なんで学術会議の件について、新聞は世論調査で問題かどうか聞いてんの? 多数決で問題かどうか決まるって? 問題であることは明白で、首相答弁はグダグダだ。調査で問題ないと答えた人がいたら、報道は反省こそすれじゃないか。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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