(週刊朝日2020年11月6日号より)
 (週刊朝日2020年11月6日号より)
 (週刊朝日2020年11月6日号より)
 (週刊朝日2020年11月6日号より)

 配偶者に先立たれ何も準備をしていなかった場合、財産や人間関係などでトラブルになるケースがある。夫婦ともに健在の今だからこそできる準備を紹介する。

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対策しておきたいのが、相続だ。

 ベストセラー『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』シリーズの監修を務める司法書士の児島充さんは、相続に必要な手続きが遺族の大きな負担になると語る。

「遺族には、相続財産と相続人を特定することが求められます。死後にこれらを把握することは、同居家族でも難しいものです」

 相続財産は、現預金だけではなく、自宅などの不動産、自動車・貴金属などの動産、有価証券、著作権なども対象となる。また、借金やローンといったマイナスの財産も相続の対象だ。遺族は、故人の預金通帳や郵便物、借用書などを手掛かりに、こうした故人の財産を調べ、把握しなければならない。個人でできない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に調査や手続きを依頼することもできるが、作業量に応じて数万~数十万円の費用がかかる。また、調査完了まで1カ月~数カ月かかる場合もある。

「財産などの情報は、エンディングノートに記して、家族にノートの保管場所を伝えておくか、生前から家族間で情報共有しておくと、相続の手続きもスムーズに進みます」(児島さん)

 エンディングノートについては後述したい。

 一方、相続人の特定作業で、遺族の大きな負担となるのが、故人の「戸籍謄本集め」だ。

 例えば、故人と配偶者、その子どもらが記載された戸籍謄本だけでは、全ての相続人を特定したことにはならない。仮に、故人と前妻(前夫)の間に子どもがいた場合、その子も法律上は相続人としての権利を有する。ややこしいのは、転籍や婚姻、法改正により、戸籍は都度新しく作り直され、過去の情報(この場合、前妻との子どもの存在)は記載されないということだ。従って、相続人を正確に特定するためには、故人の出生時から死亡時までに作成された全ての戸籍を取得しなければならない。

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