村松竜司容疑者(本人のSNSより)
村松竜司容疑者(本人のSNSより)
事件当日に村松容疑者が記入した「ヒヤリハット報告書」。<入浴後頭をふいている時にタオルがかおにかぶってしまっていた>と書かれていた(内部告発者提供)
事件当日に村松容疑者が記入した「ヒヤリハット報告書」。<入浴後頭をふいている時にタオルがかおにかぶってしまっていた>と書かれていた(内部告発者提供)
90代女性の腕に広範囲にわたってできていた黒いあざ(内部告発者提供)
90代女性の腕に広範囲にわたってできていた黒いあざ(内部告発者提供)

 本誌が9月4日号で報じた東京都江戸川区の認知症高齢者グループホームでの“虐待疑惑”に、重大な新展開があった。入居者への虐待が指摘されていた元派遣職員の村松竜司容疑者(53)が、10月20日に暴行の疑いで警視庁に逮捕されていたことが複数の関係者への取材でわかったのだ。施設を監督する江戸川区役所も虐待があったと認定し、行政指導に入った。

 関係者によると、当時、派遣職員だった村松容疑者は7月28日午後4時ごろ、入居する90代女性を1人で入浴介助していた際、女性の頭部をバスタオルで何重にもぐるぐる巻きにして覆ったという。一歩間違えば窒息させる恐れもある危険な行為だ。

 この施設では職員1人で入居者1人を入浴介助することになっている。浴室、脱衣所は誰の目もない密室空間だ。ただ、この時は、たまたま脱衣所を通りすがった職員のAさんに見とがめられていた。Aさんは村松容疑者をこう注意している。

「顔ふさいじゃったら危ないよ」
「今みたいに頭ぐるぐる巻いたら窒息するからね。気を付けてね」

 この施設では、コロナ禍で外部からの面会が制限された3月ごろから入居者の顔や体にこぶし大にもなる大きなあざが散見されるようになり、太ももを骨折する入居者もいた。施設内で虐待が行われていることを疑った一部の職員は、事態を是正する糸口をつかむために、施設内部の音声を録音し、本誌に内部告発した。上記のやり取りも、こうして記録された音声の中に残っていた。

 本誌が入手した事件当日の施設の「ヒヤリハット報告書」には村松容疑者の署名で、殴り書きのような文字でこう書かれていた。

<入浴後頭をふいている時にタオルがかおにかぶってしまっていた>

 自分でタオルを巻きつけておきながら、まるで“他人事”のような記述には違和感を覚えざるを得ない。 

 実は、この件は施設内では周知の事実だったという。内部告発したBさんは本誌の取材にこう語る。

「翌日、所長は『これじゃ殺人未遂』とみんなの前で言っていました。みんな知っていると思います」

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「みんなわかっているよな」と、入居の高齢者を威圧