90代女性の家族は、取材に対してこう思いを打ち明けた。

「逮捕は当然です。これまでけががあっても何の連絡もなかった。絶対に許せない。使用者にも責任があるはずです」

 村松容疑者は、施設内では「竹の子族の元総長」を自称していたという。

「まったく目立っていない、おとなしいやつ。竹の子族が末期の頃、同世代の周りがみんなやめてもずっと残っていて、長くいるからという理由で総リーダーをやっていた。その時のメンバーは100人もいなかったはず」(当時を知る関係者)

 施設の運営会社によると、男は2019年5月から派遣職員として施設で働き始めた。日勤にも夜勤にも入っていたという。介護資格は何も持っていなかった。

「ヤンキーみたいなしゃべり方をしていた反面、気の弱そうなところもありました。所長から注意される時はだんまりを決め込むんですが、スイッチが入ると他の職員には趣味のアイドルの話までよくしゃべりました。ある職員が『なぜ黙っているの』と聞いた時、『俺を怒らせると血の海を見る』と真顔で答えました。俺は本当は強いんだぞ、とはったりをかましているように思いました」(Bさん)

 入居者に対しては暴力的な一面を見せていたようだ。

「ゲストさんの襟ぐりを掴んで歩かせていたことがあります。お茶を飲ませる時、嫌がっているのに何度も『飲め』と強要するなど、乱暴なところがありました。夜勤の日には、『今日は俺の番だからな。みんなわかっているよな』と、ゲストさんに言い含めていた。何も問題を起こすな、トイレにも呼ぶなという脅しだったと思います。ゲストさんも夜中にトイレだって行きたくなるはずなのに、自分の都合を優先させていました」(職員Cさん)

 事態が深刻化したのはコロナ禍が本格化した今年3月以降。緊急事態宣言が発令され、感染を防ぐために外部からの面会が制限され、施設内が「ブラックボックス」化してからだ。本誌に内部告発した職員たちによると、3~7月に、少なくとも3人があざや骨折などのけがをしている。前述の録音記録には複数の職員による暴言や、入居者の泣き叫ぶ声が残っていた。その中には、村松容疑者が入居者に対し「ばーか」「今後はビンタじゃ済まないからな」などと暴言を吐いていた記録も残っていた。

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一転して虐待を認めた施設