8月にはBさんら内部告発者の通報を受け、江戸川区介護保険課が調査に入った。施設の所長や職員10人以上に個別で聞き取りをして、入居者のけがの様子も確認。そこでの証言をもとに、10月上旬、施設で身体的、心理的な虐待が複数件あったと認定し、運営会社に伝えた。身体的な虐待をしたのは今回逮捕された1人、心理的な虐待をしたのは複数人とした。今後は1カ月以内に、運営会社に改善計画書を出すことを求めている。

「施設側は虐待を認めました。(介護保険法の事業者の)指定の取り消しはあり得ますが、認定したからといって取り消すのではない。懲らしめるというより、虐待がなくなるようにするのが目的。このようなことが起こらないようにするための計画を出してもらい、それが妥当かどうか指導していく」(同課)

 運営会社は8月に本誌が取材した際には、「虐待が行われたという事実や職員の暴力、暴言等は確認できませんでした」としていたが、今回の取材では一転して認め、人事担当者が次のように回答した。

「(村松容疑者が)ゲストさんの顔をタオルで覆ったとわかり、派遣の契約を打ち切りました。社内の調査では暴力によるけがは確認できなかった。暴言は認識していなかったが、行政の調査結果があったので、それもあったと認識している。だが、虐待があったという適切な報告がなされていなかった。施設では虐待という認識がなかったのではないかと推察されます」

「行政に虐待を認定された。しっかり受け止めて、対応策を考えているところです。ほんとうに申し訳ないと認識している。入居者やご家族にご迷惑をおかけしました」

 家族にも説明済みだという。行政指導を受けて10月上旬、虐待があったフロアの入居者の家族に担当者が電話し、週刊朝日で報じられたことや、なるべく早く対策を取ることを説明した。今後も家族には説明するつもりだという。バスタオルを顔にかぶせられた90代女性の家族には10月21日、逮捕を受けて個別で「謝罪したい」と電話したという。

 警察と行政が動いたことにより、急転直下で動いた虐待問題。だが、今回立件されたのはバスタオルの一件だけで、「ブラックボックス」の中で起きていたことの多くは明るみに出ていない。

(井上有紀子)

※週刊朝日オンライン限定記事