都医師会では、約1600カ所の診療所などでPCR検査をできるようになり、”新型コロナも診られる”医療機関となったが、こうした開業医の間でも温度差があるという。

「患者さんから『熱が出た』と相談を受けても、うちでは診ないという医療機関もある。我々は『地域医療に貢献してまいります』といって開業したわけです。安全でもうかる診療には手を出すけれど、リスクの高い患者は診ないというのは、医者として許せないです」(尾崎会長)

 いずれにしても10月中には体制が整うよう、先の通知では要請している。岡部所長はこう助言する。

「地域によって事情が異なるので、国が一律で方針を示すより、地域でやりやすい方法をとるほうがいい。今の段階では決まっていないところが多いと思われる。しばらくしたら自分の住む地域での方法について保健所や役所、かかりつけ医に聞いておくとよいでしょう」

 新型コロナの治療では、富士フイルム富山化学(東京都中央区)が9月に、インフルエンザ治療薬のアビガンの臨床試験の結果を発表した。

 被験者156人を解析したところ、発熱などの諸症状が改善するまで、アビガン投与群は11・9日、プラセボ(薬効成分は入っていない偽薬)投与群では14・7日で、アビガンが早期に症状を改善できることを確認した。

 11月にも承認されるとの報道もあり、医師からは期待する声が上がる。山本部長はこう言う。

「試験結果ではウイルスが消滅するまでの期間が短くなっていました。ウイルス量を減らすという点で、一定の効果はありそうです。詳細な結果を確認する必要はありますが、アビガンはウイルスの増殖を防ぐ薬なので、ウイルスが体内で増える前、つまり早期に使う必要があります。今まではこうした薬がなかったので、承認はウェルカムです」

 水野医師は承認を待つ一方で、乱用を危惧する。

「健康保険が認められれば、どんな医師でも使えるようになります。アビガンには催奇性(さいきせい)があるので、妊婦など一部の人たちには使えません。アビガンの処方を希望する患者さんに次々処方することによる、新たな問題が生じるかもしれません」

 こう述べ、まずは感染症指定医療機関など、医療機関を限って処方を開始したほうがいいのではないか、との考えを示す。

 ダブル流行があるかどうかは不明だ。だからこそ、これからは私たちも細かく情報をチェックし、新型コロナやインフルエンザに備えたい。(本誌・山内リカ、亀井洋志)

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋