77人には著名人もいれば無名の人もいる。年齢も20代から80代とバラエティーに富む。さらに職業に至っては医師、タクシードライバー、スーパー店員、小説家、映画監督、ライブハウス店員、葬儀社社員と様々である。女子プロレスラーまでいる。

 どうしてこんな本が成立するのか?

 彼らには、たったひとつの共通点がある。令和2年4月7日午後7時にコロナによる緊急事態宣言が発令された直後、出版社の依頼により彼らの日常を日記に綴り始めたという共通点だ。

 本のタイトルにある通り、その日常は彼らの『仕事』を通じて綴られている。その仕事内容に応じて、彼らが世間や社会をどう観たのか、どう関わったのか、それぞれ違う視点で語られている。

 私は『仕事』を転々とした。新卒会社員に始まり、会社を経営し、その会社を破綻させてからは土木作業員、除染作業員、風俗店の呼び込みも経験した。日銭を得ることに汲々とした日々だった。そんな私が『仕事』を懐かしむツールとして、この本を最後の読書として選びたい。

週刊朝日  2020年9月25日号